「国内CBD市場は、どのように推移していくのか?」GreenZoneJapan代表の現役医師、正高佑志先生にインタビュー
今後、国内のCBD市場はどのように推移していくのでしょうか。
インタビュー連載第3回である今回は、引き続き著書『お医者さんがする大麻とCBDの話』で知られる正高佑志先生に、国内のCBD市場が今後どのように発展していくのか、そして関係者による市場との関わり方について、お話を伺いました。
▼以前のインタビュー記事はこちら
「第1回:医師からみて、大麻は本当に危険なのか?」
「第2回:医療用大麻とは?アスリートとCBDの関係性とは?」
目次
1985年生まれ。医師。熊本大学医学部卒。
医療大麻についての科学情報を発信する一般社団法人Green Zone Japanの代表理事。
Q1.今後、3年後、5年後の国内の方向性はどうなっていくと思われますか?
「今後、国内のCBD市場は分化拡大していくと思っています。
注目すべき点は、世間に広く認知された企業がCBD製品を出し始めていることです。
一方で、急激なバブルが起きてしまう点について、非常に危惧しています」
メジャーデビューでCBDバブルに?
「ここにきて上場企業による参入の兆しが見えてきました。
というのも、今回『チェリオ』や『ゲータレード』を販売する会社が、CBDドリンクを発売しています。しかも自販機で、1本500円と手軽に入手可能です。
この後が続くかは分かりませんが、CBDビジネスのプレイヤーが中小スタートアップを中心とした世界から大きな企業へ広がっていく転換点だと言えるでしょう。ひょっとしたら、コカ・コーラが製品を出すかもしれません。
そうなると、いよいよCBDもメジャーデビューということになります。
コロナの影響も懸念されますが、ここから1年2年で、ある種のバブルやブームが起きるのではないでしょうか。
現に今でも、さまざまなアイテムが乱立しています。例えば、CBDをシャンプーに配合した製品が大手ドラッグストアで売られています。ただ、これは果たして、薬理学的な効果があるか疑わしいとも思います。
もし一過性のブームが起きてCBDが広がった場合、バブルは必ず崩壊します。宴の後に世間の関心が別の新しい成分に移っていき、消費され、忘れられていくことを心配しています。」
堅実なCBDインフレを目指したい
逆説的に聞こえるかもしれませんが、我々は今後起きるかもしれないブームを、できるだけなだらかな動きにしたいと考えています。
言い換えるなら、バブル的な拡大を抑制し、堅実なインフレを目指すということです。
またバブル的な拡大を止められないのであれば、膨張した後の萎んでしまう過程の歩留まりを、どれくらい押さえられるのかがポイントになるでしょう。
つまり、一時的ではなく、CBDを日常的に必要とする人に、ちゃんと届けていくことが大事なのです。
ひょっとすると5年後、CBD市場に残っている人はほとんどいないかもしれません。
しかし一方で、難治てんかんの患者さんはCBDを必要とし続ける訳です。
ブームが去ろうが、ビジネスを超えたミッションとしてCBDをやっていきたいと思える起業家が、今後どれくらい出てくるのかが鍵となるでしょう。
また国内市場はアメリカの動向が大きく関係してきます。現在、毎月のように各国で大麻関連の法律が変わっていますが、日本にとっては、アメリカの連邦法が変わることが、直接的に大きな影響となるでしょう。
きちんとした啓発と、踏み込んだ話ができるメディアが必要
「また、行動が早い人達はCBN、CBC、HHCなど、他のカンナビノイドに関心を広げつつあります。
大麻に含まれるカンナビノイドは、THCやCBDだけではなく、実に120種類以上あると言われています。これがビジネス的に今後どう広がっていくか、推移を見守る必要があるでしょう。
気になるのはCBNやHHCは、軽い精神作用があると言われている点です。
精神作用自体は有用なものだと私は考えていますが、慣れないうちは扱いが難しいのもまた事実です。
たとえば、これらの成分を含む製品によって交通事故が発生してしまうと、世論は一気に規制の方向に傾くでしょう。
かといって、これを法律で規制したところでアンダーグラウンドに潜るだけです。
事故をなくすための王道は、きちんと教育、啓発していくことだと思います。
薬物を使わないことを前提として議論するのではなく、『精神作用があるものを使った結果、バッドトリップに陥った時にどのように対応すればいいのか』といった、踏み込んだ話ができるメディアが必要です。」
本当に必要としている人々に安定的な供給を
「我々は今、患者会を運営しています。これはシビアな病気や難治のてんかん、末期がんなどの患者にCBD、CBG、CBNを非営利価格で供給する活動です。
顕著な例としては、3歳の小児てんかんの子などがいますが、CBDが効いている人は、なにか別の有効成分が出てくるまでは一生、CBDを飲み続けなければなりません。
ブームが来ようが去ろうが、その人たちには関係ないのです。
そういう人たちが、10年後でも安定してCBDを使えるような状態にあって欲しいと願っています。
したがって、製品を取り扱う会社には、長く続いた上で、安定した供給を望んでいます。参入して大儲けしてサッと撤退してしまうと、その人たちが置いてきぼりになってしまうからです。我々は常に、シリアスな病気を抱える人たちの代理人でありたいと考えています」
ビジネス的には、中間層の発掘が鍵に
「今後のCBD製品の方向性として、メディカルでシリアスなものと、カジュアルなものに分岐していくのではないかとも思っています。
健康と病期の狭間に位置する『眠れない、イライラする、不安が強い』といった症状に悩む人たちにも恩恵はあります。これらの層に対してアプローチできるかどうかが継続的なビジネスの鍵ではないでしょうか。
また、世の中はインスタやティックトックなどの登場から分かるように、どんどん直感的でインスタントなものを求められるようになっており、人々は待てなくなっています。
しかし、CBDは飲んで速攻で効くものではなく、最低でも1週間は様子を見ていくべきもの。その辺りを上手に伝えられるか、ここでもインフォメーションは重要です」
Q2.これからCBDブランドやメディアを始めたい人は、どんな意識を持つべきでしょうか?
「CBDブランドは、昨年から10倍ほどのペースで増えていますので、関係する人たちも増加していることでしょう。
我々は、ユーザーのみならず事業者も含めて、CBDに関わる全ての人たちが幸せになることを願っています」
本質的な価値を重要視すべき
「CBDは原料を買ってきて、溶かせば製品ができてしまいます。こんな簡単に、ビジネスをセットアップできるものはあまりありません。
プレイヤー側にとっては、自分のやりたいことができて、ささやかでもお金を手にできれば、それは自尊心やプライドの獲得にも繋がり生きる糧になるのではないか。夢の乏しい時代に、自己実現の機会となれば素晴らしいことだと思います。
一方でCBDビジネスに関わる人たちには、本質的な価値を重要視して欲しいと願っています。新しいことは、奇をてらったものとなりやすく、目先の売上だけを追いかけると本当に効くのかどうかはおざなりになりがちです。そういうものは長続きしませんし、ユーザーのことを幸せにしません。」
CBDは、人々の人生にコミットできる素晴らしいビジネス
「大麻から抽出されたCBDのみをメインとして製品化していく動きは、難病患者の生活を改善するためにスタートしました。
世の中ではブルシットジョブと呼ばれるような、給料はいいけれど本質的には何の役にも立たないような仕事が増えている印象です。
しかし、CBDは良心的に取り組めば、他者に感謝されて人々の人生にいい意味でコミットできる可能性があるビジネスです。皆さんにも経済的利益とは別のところで得られる何か経験して欲しいと願ってやみません。」
まとめ
以上、3回に渡ってGreenZoneJapan代表で医師の正高佑志先生より、医師の視点から見たCBDの世界について、インタビューを連載しました。
正高先生の第3回インタビューをまとめると、
国内でもメジャーな企業がCBD製品を出し始めていることから、今後も市場は拡大していくということでした。
そして、行動が早い人たちは、既にCBD以外のカンナビノイドの製品化にも着手しています。
しかし、一時的なバブルで終わることなくCBD市場が確実な拡大を目指すためには、きちんとした啓発と、踏み込んだ話ができるメディアが必要であり、
また、医療的にCBDを必要としている人たちのためにも安定的な供給が大事である、ということでした。
CBDは、人々の人生にも良い影響を与えられる素晴らしい製品であることから、事業者のみなさまには本質的な価値を追求していってほしい、という願いも明かしていただきました。
(インタビュー:CBD JAPANメディア編集部)
■正高先生のインタビュー一覧
正高先生には、他に以下2本のテーマでインタビューも行いました。
「第1回:医師からみて、大麻は本当に危険なのか?」
「第2回:医療用大麻とは?アスリートとCBDの関係性とは?」
■過去のインタビュー記事はこちら
▼日本CBD協会の代表、川満隆夫氏へのインタビュー
「前編:国内CBD市場は今後どう発展するか」
「後編:今後の国内CBD市場でのビジネスチャンスと注意点は?」
この記事を監修した人
CBD JAPAN 編集部
CBD JAPANは2021年10月に設立された企業で、「心身の本来の力を引き出し、健康で明るい社会を作る」というミッションを掲げています。コラムは全て下記の監修者のもとで、コンテンツ制作ポリシーに従い制作しております。