「医療用大麻とは?アスリートとCBDの関係性とは?」GreenZoneJapan代表の現役医師、正高佑志先生にインタビュー
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2022年2月5日

「医療用大麻とは?アスリートとCBDの関係性とは?」GreenZoneJapan代表の現役医師、正高佑志先生にインタビュー

また、海外に目を向けると、アスリートを中心に使われていた医療用麻薬の代替品として、大麻やCBDが用いられるようになってきました。
これによって、アスリートに多くの影響をもたらし、ドーピング機構においてもルール改正の動きが出てきたのです。

インタビュー連載第2回目のこの記事では、引き続き著書『お医者さんがする大麻とCBDの話』で知られる正高佑志先生に、医師の視点から見た、大麻の良い点と悪い点やアスリートとCBDの関係性、そして医療用大麻と嗜好品との違いについて迫っていきます。

▼前回のインタビューはこちらから
「第1回:医師から見て、大麻は本当に危険なのか?」

Q1.大麻の良い点と悪い点を教えてください。

「色々なメリットがありますが、大麻の長所は嗜好品として以外にも医療用途で使える点です。
痛み止めだけではなく不安、不眠、PTSDのような心の病気など、日常的に悩みがちなものに対して、幅広く使われています」

メンタルの『AED』となる大麻

「大麻の精神作用は悪者にされがちですが、医療的には有用です。
パニック障害、うつ病の人たちは同じ思考の中をグルグル堂々めぐりしている傾向がありますが、大麻はこの負の無限ループから患者を抜けさせられる効果が期待できるのではないかと考えています。
言わば、メンタルの『AED』ですね。
これらの疾患に対して、現在は幻覚剤やマジックマッシュルーム、LSDも使えるようになってきましたが、これらも同様の効果が期待されます」

精神障害が出る人もいるのでは?

「一方で、ごく一部の人が大麻使用をきっかけに、統合失調症のような慢性的な精神障害を発症するというデメリットがあります。

しかし、お酒とは違ってたくさん吸えば吸うほど精神障害へのリスクが高まるという訳ではありません。
どうやら、遺伝的に統合失調症のリスクが高かったり、大麻と体質が合わない一部の人々がTHCを摂取すると、発症のきっかけになってしまうようです。

ただし、そういった人たちは仮に大麻を吸わなくても、人生のどこかの段階で精神疾患を発症している可能性が高いのではないかと思います。また割合としては全体の1%前後に過ぎず、一人を発症から予防するためには5000人を逮捕しなければならないと言われており、数学的にもあまり勧められた運用とは言えないでしょう。

また、精神作用のあるTHCには、若干の依存性があると考えられています。
一方でCBDについては精神作用はなく、実際にWHO(世界保健機構)からも乱用や依存の危険性は証明されなかったというレポートが公開されています。また、スポーツの世界のドーピング規制からも外れており、乱用の危険性はないというのが定説です」

正高医師のインタビュー写真

Q2.アスリートとCBDの関係性とは?

「近年、CBD関連の企業が格闘技の大会スポンサーになっているのが見受けられます。
CBDは、怪我が絶えず鎮痛の問題を常に抱えている、コンタクトスポーツにとってはとても役に立つと、関係者に注目されています」

大麻は痛み止め麻薬の代替品に

「アメリカでは、痛み止めに医療用の麻薬を使いがちです。2000年以降、気軽に処方された麻薬のために、気がついたら依存になっていたり、オーバードーズで死んでしまったりする例が頻発し、“オピオイド・クライシス“という社会問題となっています。

その代替物として、CBDや医療大麻に注目が集まっているのです。実際に、アメリカンフットボールやバスケットボールの選手によってよく使われているようです。
日本においても、痛みのケアや疲労回復の促進目的に、CBDが利用されるようになりました。

アスリートは普通の人以上に感度が高い傾向があり、自分の体の声をよく聞いています。そういう人たちがCBDを使ってみた結果、筋肉痛からの回復が早かったり、筋肉疲労からの抜けが早かったりといった実感があり、少しずつ広がっているのです。
またコンタクトスポーツ以外にも、サーフィンやスノーボード、スケートボードなどの滑走系スポーツやウルトラマラソンなどの耐久系スポーツとも、大麻は親和性が高いようです。」

日本でもメジャースポーツを中心に解禁へ?

「日本のプロ野球にもCBDを使っている人がいますが、球団のコンプライアンス上、スポンサー契約は難しい状況なのでしょう。格闘技はパチンコ屋などのスポンサーもいますので、そのあたりが比較的寛容なのでしょうね。

しかし、日本においても今後、メジャースポーツへの進出も遠くないだろうと推測しています。
アメリカでは昨年から今年にかけて、4大スポーツであるアイスホッケー、アメフト、バスケ、野球において次々とルールが変わり、大麻の使用が罰せられなくなってきました。

アスリートが使うことによって、国際的なドーピング基準も変わっていくだろうと思います。
例えば、アメリカのオリンピック女子100m走の優勝候補だった、シャカリ・リチャードソン氏が、代表に選ばれた後にマリファナ陽性で1ヵ月出場停止となり、東京五輪出場にできませんでした。

これはアメリカ国内で非常に問題になり、バイデン大統領を筆頭に『ルールがおかしい、見直すべき』という世論が湧き上がったのです。
WADA(世界ドーピング防止機構)やUSADA(米国アンチ・ドーピング機構)などのドーピング機構のルールは、1〜2年以内に改正されるだろうとも言われています」

国際的な流れが日本にも

「そして、ドーピング機構のルール改正は、国内にも多大な影響を与えると思っています。
なぜかと言うと、海外の選手は使えるが日本の選手は使えないというのは、非常にアンフェアだからです。
今後は、『日本でもルールの基準をそろえないと、国際マッチの際に不利なのでは』などという議論が出てくるでしょう。
言わば『外圧』がかかってくるものと予想されます」

正高医師のインタビュー写真

Q3.そもそも医療大麻とはなんですか?嗜好用大麻との違いなんですか?

「医療大麻はいわゆる『ダメ、ゼッタイ』と言われている大麻と一緒なのでしょうか?という質問は、実際のところよくあります。
しかし、一言で答えるなら『同じもの』です」

医療用大麻と嗜好用大麻は同じもの

「医療用大麻と嗜好用大麻は、物質的に『同じ』です。

例えば、誕生日用のケーキと普通のケーキでは、用途以外に違いが無いのと同じ理屈です。
本人が医療を目的として使っていれば、それは医療大麻となるのです。

なお、大きな医療用大麻としての枠組みの中にはCBDも含まれます。なので考えようによっては日本でも既に医療大麻は利用されているのです。」

大事な理念や熱意は伝わりづらい現状

「日本において大麻は、悪いイメージが定着しています。
そのため、一般的な企業の多くはCBDと大麻を切り離してプロモーションをかけていきたいと考えています。

CBD製品自体は海を渡って2週間という短い時間で届きます。しかしビジネスが広がっていく速度と比べ、裏側にある理念や熱意という形のないものはなかなか伝わっていかない現状があります。

CBD製品は、カルフォルニア州の合法化活動を行っている人たちが自らリスクを取り、大麻のイメージアップを図るべく、献身的な姿勢で世に出したのが始まりです。彼らの思いは『CBD Nation』という、ドキュメンタリー映画をご覧になると分かります。我々も彼らの思いを汲み、また直接やり取りをしながら、同じようなストーリーを伝えていきたいと考えています」

Q4.現在の国内CBDメディアについて思うことはありますか?

「国内メディアは、科学的な根拠の明示という点に課題があります。また単なる広告に終わらずジャーナリズムとして機能して欲しいと思います」

発信はサイエンスをベースに

「英文のウェブサイトでは、科学的な参考文献にリンクが張られているのをよく見かけます。
ところが日本には、大麻関連に関わらず、大手メディアを含め参考文献を明示するという習慣がありません。

社会的なイメージが悪い『大麻』という領域について、それを払拭するには個人の意見を超える根拠が必要です。したがって、サイエンスをベースに話をするべきでしょう。GreenZoneJapanでは海外の論文や研究結果をベースに情報を発信しています。

2017年以降、CBD・大麻についての信頼に足る情報の多くは、我々のコツコツとした情報発信によってもたらされたと自負しています。

現在の活動目的は、より科学的に正しい情報を伝えること

「GreenZoneJapanでは、より科学的に正しい情報を伝えることを目的としており、海外の論文や研究結果をベースに、情報を発信しています。

また、我々は時には疑惑のある製品について、ネガティブな内容の記事を掲載することもあります。そうすると関係者から訴訟をちらつかせる内容証明郵便が届いたりもします。

しかし、誰かにとって不都合な情報を発信するのがジャーナリズムです。
この国には広告は溢れていますが、ジャーナリズムは圧倒的に足りていません。

ステルスマーケティング時代とも言われる現代では、情報発信をしても『広告なんでしょう?』で片付けられてしまうでしょう。それを超えて、単なる広告で終わらないような情報発信がメディアとして大事だと考えています。」

正高医師のインタビュー写真

まとめ

大麻は、メンタルを病んでしまっている人たちにとっては「AED」となり得る、医療的にも有用なものです。
また、アスリートにとってもメリットがあり、医療用麻薬の代替品としても使われるようになりました。

これによって、ドーピング関連における国際的なルールも改正されようとしているのです。
正高先生はさらに、日本におけるメディアは「科学的な情報発信」を大事にすべきであると指摘しています。

では、日本のCBD市場は今後、どのように推移していくのでしょうか?
次回のインタビュー連載第3回では、正高医師の視点から、CBD関係者の市場との関わり方も含めて、深くお話を伺いたいと思います。

(インタビュー:CBD JAPANメディア編集部)

■正高先生のインタビュー
正高先生には、他に以下2本のテーマでインタビューをしております。

  1. 「医師からみて、大麻は本当に危険なのか?」
  2. 「国内CBD市場は、どのように推移していくのか?」

■過去のインタビュー記事はこちら
▼日本CBD協会の代表、川満隆夫氏へのインタビュー
「前編:国内CBD市場は今後どう発展するか」
「後編:今後の国内CBD市場でのビジネスチャンスと注意点は?」

インタビュー記事のバックナンバーはこちらから

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