「医師から見て、大麻は本当に危険なのか?」GreenZoneJapan代表、正高佑志医師にインタビュー
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2022年1月18日

「医師から見て、大麻は本当に危険なのか?」GreenZoneJapan代表、正高佑志医師にインタビュー

大麻は、日本では『大麻取締法』で厳しく規制されており、世間的にも『ダメ、ゼッタイ』というイメージが広く浸透しています。
しかし現在、海外では『グリーンラッシュ』と呼ばれる大麻解禁ブームが発生しており、国内においても、大麻の成分であるCBDを使った製品が、市場に出回るようになりました。

本当に大麻は、医学的・科学的な観点から見て危険なものなのでしょうか?
そこで今回CBD JAPAN編集部は、インタビュー連載第2弾として、著書『お医者さんがする大麻とCBDの話』で知られる医師の正高佑志先生に、医学的な視点で見た大麻の影響や、国内での理解に向けた課題について、お話を伺いました。

Q1.医師の視点から見て、大麻は本当に危険なものですか?実際の大麻やCBDの害や依存性は?

「国内においては『ダメ絶対』というスローガンの元、一回でも使うと人生が終わるとも言われている大麻ですが、科学的には明確な結論が出ています。
世界でも有名な医学誌にも『人体への影響は限定的』という内容の論文が公開されていますので、科学的なデータをベースに議論を進めるべきでしょう」

世界五大医学雑誌の論文では『有害度ランキング8位』

「大麻が危険か否かという点について、医学的な結論が導き出されているものとして有名なものが、イギリスの研究者が2010年に発表し、世界五大医学雑誌の一つとして名高い『ランセット』に掲載された論文です。

論文では、違法なドラッグと合法なタバコやお酒を含めて、どれが一番人体に害があるのかをランク付けしています。
それによると、大麻は『20点』という点数であり、全体のランキングは8位という結果に。
つまり、依存性が無いわけではないものの、人体への影響は限定的だと結論付けられているのです。
一方で、お酒は『73点』と最も点数が高く、一番危ない『ドラッグ』でした。

また、我々も独自にアンケート調査を行っています。
その結果、大麻の依存になる可能性がある人は、使ったことのある人の1割程度に過ぎないことが分かったのです。
類似のアンケートの結果によると、お酒の依存率は25%もあり、こちらでも大麻の方が依存性が低いという結果となりました」

科学的なデータをベースに議論を

「大麻が好きな人たちは、『大麻に依存性はない』と主張します。
一方で、取り締りたい人たちは『大麻はとても危ないものだ』として譲りません。

また、日本の薬物問題を取り締まりたい人たちは、彼らにとって都合の悪い結果が出ないよう、お酒と大麻などの違法薬物を比較するのを頑なに避けます。
ところが海外では、お酒も薬物の中に入れて議論するのが一般的です。

私は、何が安全で何が危険なのかは、科学的なデータをベースに議論すべきだと考えています」

カンナビノイド専門医である正高佑志医師への大麻・CBDインタビュー

Q2.CBDが市民権を得るためには何が必要だと思いますか?

CBDが市民権を得るために必要なのは、法律の問題をクリアすることでしょう。
法律の改正に向けた動きは国内でもあり、また水面下では製薬会社などが準備を進めています」

法律の改正に向けた3つの動き

「現行の日本の法律では、CBDは大麻草の種や茎から抽出しなければなりません。
しかし、実際に多くの成分が含まれているのは、花の部分です。
この法律は1948年につくられたものですが、このような片寄ったルールでやっているのは世界で日本と韓国くらいでしょう。

国内において、このルールを変えようという動きがあります。
ルールが変更された場合、CBD・THCという『成分』で規制するようになります。

現状の問題点は、一部の原料において、本当に茎や種から抽出されているのかが分からず、法的にグレーゾーンになっていることです。
しかし、成分で規制するルールに変われば、CBDは完全に合法となります。
すると、今まで及び腰だった上場企業も、CBD製品を取り扱えるようになるでしょう。
これによって、世の中に一気に広まっていくと考えています。

現在、大麻取締法の改正に向けて、以下の3つが同時に動いています。
1)医療用大麻をてんかんの子どもたちに使えるようにしようという医薬品承認の動き
2)新たに大麻の『使用罪』を作り罰則を強化しようという動き
3)茎と種という、部位規制を撤廃しようという動き

今後、1〜2年の間に国会で話し合われ、法律が改正されるのではないかと推測しています」

大手製薬会社も水面下で準備

「実は現在、大手企業を中心としたさまざまな関係者が、来るときに備えて着々と仕込みに動いています。
一例を挙げると、小林製薬は『小林製薬CBD』で商標を取得しています。

その他にも、大きな製薬会社のサプリメント部門はどこもCBDを認知しています。
彼らは、拡大が予想されるCBD市場に参入すべく、水面下で準備をしているのです」

Q3.CBDを知らない日本の方に一言で説明するとしたら?

「『痛み、不安、不眠、うつに対して使われている、大麻由来のサプリメント』
CBDを一言で表すと、このように説明できるでしょう。
我々はこれまでにも国内において、さまざまなユーザーにアンケートを取りましたが、リラックス目的で使っている人が最も多く、国際的にも同じような傾向が見られます」

カンナビノイド専門医である正高佑志医師への大麻・CBDインタビュー

Q4.現在の日本の大麻CBD市場に対しての課題はなんですか?

「一番の課題は、法律で茎種といった抽出する部位が規制されている一方で、その他の要素については全く規制がないという状況です。
これは、日本の消費者にとって、また一般層へCBD浸透という観点からも、課題が残されている状態だと言えるでしょう」

危険成分が混入した製品が流通している可能性も

「例えば『ベイプ』は、成分が肺から体に吸収されるのに雑貨扱いで、何も規制がありません。
アメリカでは以前、リキッドに含まれている希釈剤(ビタミンEアセテート)によって、ベイプ関連の肺炎が問題となりました。
コロナ以前の話であり、話題に上がることは少なくなりましたが、若い人を中心にたくさんの人が亡くなってしまったのです。口から摂取して安全なものが、気化して肺に吸い込んでも大丈夫とは限らないことが教訓として示されたのです。
この問題を期に、他国では成分規制をつくっています。
しかし、日本ではそういった動きは全くなく、誰も問題視していません。仮に問題となった希釈剤が使われた製品であっても、日本では合法的に流通させることが可能なのです。
そのため、ユーザーはどんな成分が入っているのか、自分で判断しなければなりません。
また現在では、危険成分の混入と逆に、表示通りのCBDが含有されていない製品がまかり通っているという問題も発生しています」

日本でも製品のルールづくりを

カリフォルニア州ではここにきて、CBD製品を対象としたルールをつくりました
今後は、製品としてちゃんとできているか、また重金属や残留農薬がないかといったチェックが始まります。

そして、アメリカにおいて重金属や残留農薬が検出されて売れなくなった原材料は、規制がない国々へ、つまり日本にも輸出されてしまう恐れがあるのです。
国内でもきちんと検査しないと、質の悪い原材料を使った粗悪品が流通してしまいますので、日本においても今後、スタンダードなルールをつくっていく必要があります。
万が一、健康被害が出た場合はセンセーショナルに報道されますから、深い事情を知らない世間は分かってくれず、CBDは悪者とされてしまうでしょう」

Q5.現在の日本の大麻CBD市場において、ポジティブな要素はありますか?

「これから慎重に推移を注視すべき日本のCBD市場ですが、ポジティブな要素もあります。
かつてはグレーな世界だったCBD業界でしたが、近年では若い優秀な人たちの参入が相次いでいる点です」

優秀な人材が参入するCBD業界

「日本においても、若く能力のある人たちがCBD市場に参入してきました。
これは、非常にポジティブにとらえています。
渋谷ではCBDのお店が増えており、そこでは20代の人たちが知恵を尽くして製品をつくっているのを見かけます。
中には、意味があるのかな?という製品もありますが、いい傾向だと思います」

融資を受けて起業できる産業に

「CBDは限りなくグレーな世界から始まったため、彼ら以前のCBD業界では『怪しい人たち』を多く見かけました。
しかし現在では、銀行からきちんと融資を取り付けて起業される人も出てきており、真っ当なビジネスとして市民権を得てきた印象です。
女性の美容効果などにも使われイメージが向上しており、デパートでも製品を扱うなど、ポジティブな流れとなっています」

カンナビノイド専門医である正高佑志医師への大麻・CBDインタビュー

まとめ

大麻は、人体への影響はお酒よりも限定的なものであると結論され、その論文は世界的に権威のある『ランセット』という雑誌に掲載されていました。
しかし、国内では法整備がされていないため、その問題をクリアしない限り市民権を得ることは難しいようです。

また、若い優秀な人たちも相次いで市場参入していて、融資も受けられるほどイメージが向上してきたCBDですが、健康被害が発生してCBDが悪者とされてしまう前に、日本でも早急なルールづくりが必要ということでした。

正高先生には、他に以下2本のテーマでインタビューも行いました。

  1. 「医療用大麻とは?またアスリートとCBDの関係性とは?」
  2. 「国内のCBD市場は、今後どのように推移していくのか?」

医師から見たCBDの世界について、次回はより深く迫っていきたいと思います。

■過去のインタビュー記事はこちら
▼日本CBD協会の代表、川満隆夫氏へのインタビュー
「前編:国内CBD市場は今後どう発展するか」
「後編:今後の国内CBD市場でのビジネスチャンスと注意点は?」

インタビュー記事のバックナンバーはこちらから

この記事を監修した人

CBD JAPAN 編集部

CBD JAPANは2021年10月に設立された企業で、「心身の本来の力を引き出し、健康で明るい社会を作る」というミッションを掲げています。コラムは全て下記の監修者のもとで、コンテンツ制作ポリシーに従い制作しております。

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