てんかんのある人が転職活動をするときのポイントは?向いている仕事や支援機関も紹介
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2024年7月16日

てんかんのある人が転職活動をするときのポイントは?向いている仕事や支援機関も紹介

「転職したいけど、てんかんがあるので不安」「転職のときにてんかんのことを打ち明けるべき?」「就職先で発作が起きたらどうしよう」など、てんかんがある故に、転職や就職に関して不安や懸念を抱えている人も多いでしょう。

てんかんは突然意識を失って倒れる大変な病気というイメージが先行しがちですが、てんかんのある人は1000人に5〜8人とされており(※1)、決してめずらしくはありません。薬で発作をコントロールしながら、日常生活を送り、フルタイムで働いている人も多く存在します。

本記事では、転職に不安を抱えているてんかんの人に向けて、転職活動を行う際のポイントや、仕事を無理なく続けていくために意識したいこと、てんかんのある人が活用しやすい就労支援機関・サービスなどを解説します。

記事の最後では、てんかんのことを就労先に伝える際のポイントもご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

目次

てんかんがある人の仕事上の不安や懸念

てんかんがある人にとって、発作は大きな不安要素です。転職やキャリアチェンジをしたいと思っても、懸念が払拭されず、諦めてしまうケースもあるでしょう。一方、漠然とした不安を抱えているものの、具体的に何が不安なのかが分からない場合もあるかもしれません。

ここでは、てんかんがある人が転職や就職の際に抱えがちな悩みを具体的にご紹介します。

「仕事中に発作が起きたら」と思うと不安

てんかん発作は、特定の状況や条件が重なって起きやすくなることが分かっていますが、多くの場合は、前触れがなく、突然起こるものです。(※2)てんかん発作の多くは薬でコントロールできるものの、仕事中に発作が起こる可能性もあるわけです。

よって、「社外の人と話している時に発作が起きたらどうしよう」「周囲に迷惑をかけてしまうかもしれない」などの不安を抱えがち。突然の発作に対する不安は、てんかんのある人なら、多くが感じたことのある不安ではないでしょうか。

職場の人間関係に影響しそう

職場の人間関係に関する懸念も大きいでしょう。「もし発作が起きたら、同僚の接し方が変わってしまうのでは?」という不安を抱えるのは当然のことかもしれません。

また、「体調不良の際に迷惑をかけてしまうかも」と考えてしまう人も。定期的な通院や急な休みに申し訳なさを感じる人が多いようです。

業務上の配慮を言い出しにくい

定期的な通院が必要なことをはじめ、仕事における配慮を言い出しにくいというのも懸念として挙げられます。発作が起きた際に対応をお願いしたいと考えているものの、なかなか言い出せず、発作が起きたらどうしようとヒヤヒヤしている人もいるかもしれません。

発作の症状が多岐にわたるが故に、理解を得るのが難しい場合もあり、理解してもらえないストレスに苦しむことも考えられます。

転職により症状が悪化するのが不安

てんかん発作の代表的な誘因として、疲労やストレス、睡眠不足が挙げられます。(※3)転職による環境の変化がストレスにつながってしまう可能性はゼロではありません。

また、仕事内容や人間関係による疲れを抱えてしまう可能性も大いにあります。職種が変わった場合は、新しい知識を習得するために頑張りすぎてしまう場合も。転職による症状の悪化を懸念する人は多いでしょう。

仕事を続けられるか自信がない

「仕事を続けられなかったらどうしよう」という不安を抱える人も多いのではないでしょうか。

仕事を続けられない理由はさまざまですが、「転職後に症状が悪化した」「職場で理解が得られなかった」「発作後、働きにくさを感じてしまう」「想定よりハードワークすぎる」などが考えられます。

そもそも転職や就職は可能なのか?

てんかん発作が落ち着いていない場合は、働くこと自体への自信を失ってしまうかもしれません。てんかんと付き合っている以上、不安や懸念を完全に払拭することは難しいかもしれませんが、てんかんがある人も、自分らしく働くことは可能です。

後悔しない転職のためのポイントは、以降の見出しで解説していきます。

転職・就職活動において、てんかんのことを申告するべき?

法律上、「就職時にてんかんの有無を申告しなければならない」のような決まりがあるわけではありません。よって、てんかんの開示義務はなく、転職活動や就職活動にあたって、会社に伝えるかどうかは本人が判断することが可能です。

「てんかんのある人が転職活動を行う際のポイント」の見出しでも解説しますが、申告するかしないか、どちらがいいのかは難しい問題です。(※4)さまざまなシーンを想定し、納得のいく決断をすることが大切です。

てんかんのある人が転職活動を行う際のポイント

より良い人生を送るための選択肢の一つが転職活動です。ここからは、上でご紹介した不安や懸念をできるだけ払拭するための方法として、てんかんのある人が転職活動を行う際のポイントをご紹介します。悔いのない転職活動にするために、ぜひチェックしてみてください。

てんかんについて申告するかどうかを検討する

まずは、てんかんについて就業先に伝えるのか、伝えないのかを検討しましょう。就労の方法は大きく3つに分けられます。

障害者雇用枠

1つ目は、障害者雇用枠を選択する方法です。日本の制度において、てんかんは精神障がいと同様に扱われており、「精神障害者保健福祉手帳」の対象になり得ます。(※5)症状や日常生活への支障度合いによって手帳を取得できる可能性があり、必要に応じて、こちらを活用するかどうかを検討してみましょう。

障害者手帳を保有していることで、障害者雇用枠での就職が可能となります。さまざまな配慮が受けられる一方、職種が限定されてしまうのがデメリットです。また、障害者手帳の申請には条件があるため、希望したからといって必ずしも交付されるわけではない点を押さえておきましょう。

オープン就労

2つ目は、オープン就労です。転職・就労時に、てんかんについて開示する方法です。オープンにすることで、採用において不利になることも考えられます。しかし、いざという時にサポートしてもらえたり、必要な配慮をしてもらえたりという点で安心感を得やすいでしょう。

クローズ就労

3つ目は、てんかんのことを開示せずに就職するクローズ就労です。てんかんに触れない分、採用時にスムーズに進むケースはあるかもしれません。しかし、仕事中の発作により、後々発覚する可能性がある点は考えておきたいところです。

症状について説明できるように準備しておく

就職先に、てんかんについて伝えるか伝えないかは別として、自身の症状について説明できるように準備をしておくことは大切です。仕事を続けていくなかで、周囲の介助が必要なシーンや、突然の発作により意図せずてんかんの説明が必要なケースがあるかもしれません。

主治医により、症状の詳細や避けるべき条件などを記した診断書を作成してもらうのも一つの方法です。(※6)

働きやすい職場かどうかを見極める

てんかん発作をコントロールできている場合は、一部の職業を除いて、ほとんどの仕事に就くことが可能です。一方で、てんかんがある人は、規則正しい生活を送って、発作の自己コントロールを行うことが大切です。また、治療のためには、定期的に通院する必要があります。(※7)

転職の際には、希望の就職先が自身にとって働きやすい職場であるかどうかを見極めることが重要です。例えば、フレックスや時短、在宅ワークなど、柔軟な働き方ができる職場は、体調に合わせて無理なく働きやすいでしょう。

てんかんへの理解の有無や、通院の時間を確保できるかどうかも確認しておきたいところです。また、職場内に相談窓口が設けてあるケースも存在します。自分にとって必要な要素を考えてみてください。

焦って就職・転職を決めてしまわない

転職のタイミングをよく見極めることも大切です。発作が落ち着いたと思っていても、無理をすると症状が悪化してしまうことも考えられます。主治医と相談し、無理なく行える状態かどうかを見極めておきましょう。

場合によっては、転職のタイミングを先延ばしにする必要が出てくるかもしれません。働くこと自体が難しい場合や経済的な不安が大きい場合は、障害年金を受給できる可能性があるため、検討してみてください。(※8)

就けない仕事を把握する

てんかんがある人は、仕事内容が発作に影響するかどうか、発作が起きた際に危険がないかなどを十分考慮して仕事を選ぶことが大切です。自身の発作が起きやすい状況や現在の症状を改めて考えてみましょう。

また、てんかんがある人は、一部の免許の取得が制限されており、関連する職業に就くのは難しいといえます。例えば、航空従事者や船員、狩猟、銃砲や刀剣などを扱う職業(※一部例外あり)などが挙げられます。(※9)

運転免許に関しては、大型免許・第2種免許は取得できません。普通自動車免許は条件によって取得が可能ですが、万が一のことを考えると、運転をメインとする職業への就職は難しいでしょう。(※10)

現在、上記のような制限がありますが、法律は見直されるものです。今は就けない職業だとしても、今後ずっと就けないとは限りません。希望する仕事がある場合は、条件面などをあらかじめ確認しておくと安心です。

続けやすい仕事(職種)を把握する

発作が落ち着いている場合でも、無理が続くと、症状の悪化につながってしまう可能性があります。仕事を長く続けていくためには、自分に合った職種を見極めることが重要です。心身の負担が大きすぎないか、規則正しい生活を送れるかなどを確認しましょう。

例えば、一般事務やプログラマーなど、外回りでなくオフィス内で完結する仕事は、続けやすい傾向にあるかもしれません。Webデザイナーやライター、動画編集などは、在宅ワークの求人を比較的多く見つけられます。

ただし、一概に「どの職業が働きやすい」とは言えませんし、「てんかんがあるから」と、希望の職業を諦めるのはもったいないでしょう。自分で自分の可能性を狭めないようにして、より良い選択ができるのが理想です。

てんかんのある人が仕事を続けるために意識しておきたいポイント

仕事においては、安定したパフォーマンスを求められがちです。ここからは、てんかんのある人が仕事を続けていくうえで、気をつけたいポイントをご紹介します。

自分の症状を把握する

まず一番は、自分の症状を把握しておくことが大切です。てんかん発作は、予期せず起こるものも多いですが、何らかの前兆がある場合もあります。また、発作が起きやすい状況や条件などが存在するケースも。

自分の状況を知っておくことで、スムーズに対応できたり、発作を避けられたりすることがあるかもしれません。

生活リズムを整える

てんかんの有無に関わらずですが、仕事においては、心身のコンディションを整えることが大切です。特に、てんかんがある人は、疲労が発作の誘因になりがちです。生活リズムを整えることが、体調の安定、そして仕事のパフォーマンスに大きく影響するでしょう。

定期的に通院する

てんかんを抱えている人は、治療を継続し、発作をコントロールすることが重要です。薬の飲み忘れが発作を誘発することも知られています。定期的に通院することが、就労の安定につながるのです。

ストレスを抱えない

ストレスは、てんかん発作の誘因の一つとしてよく知られています。ストレスを発散したり、悩みを誰かに話したりして、ストレスを一人で抱え込まないように意識しましょう。相談窓口を活用するのも一つの方法です。職場に相談窓口がある場合は上手く活用してみてください。「日本てんかん協会」をはじめ、相談事業を展開している団体も存在します。

てんかんのある人が活用できる就労支援機関・サービス

てんかんのある人が転職や就職などをする際に、困ったことがあれば、就労支援機関やサービスの活用を検討してみるのも良いでしょう。

それぞれで支援の内容が異なるため、自分に合った機関・サービスを見つけることが、より良い就労のためのカギとなります。

以下では、代表的な就労支援機関・サービスを5つご紹介します。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業は、障害者総合支援法に基づいて行われているサービスの一つです。てんかんのある人を含め、障がいのある人の就職や復職を支援します。

一般就労などを希望する65歳未満の人が対象。適性の把握から、ビジネスマナーの習得や求職支援まで一貫したサービスを受けられるのが特徴です。(※11)2020年10月時点で、全国に3,301か所の事業所が設けられています。(※12)

ハローワーク

ハローワークは、公共職業安定所とも呼ばれています。厚生労働省が運営している無償の総合的雇用サービス機関です。全国に500か所以上の事業所があり、地域ならではの雇用支援を行っています。

ハローワークには、障がいのある人向けの専門的な相談窓口が設置してある窓口も存在します。専門の担当者によって、より細やかなサポートを受けられます。(※13)

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、専門的な職業リハビリテーションサービスを受けられます。「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構」が提供しており、全国各都道府県に1か所以上の事業所が設けられています。事業主に対する援助や相談を行っているのも特徴です。(※14)

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、雇用や福祉、教育機関と連携しながら、身近な地域における就業や生活における一体的な支援を行っている施設です。障がいがある人の雇用や生活の安定を目的とし、2024年4月1日時点で全国に337か所の事業所が設置されています。(※15)

健康管理や金銭管理などに関するアドバイスも受けられるのが特徴です。必要に応じて、職場・家庭訪問なども実施され、細やかなサポートを受けられます。(※16)

転職エージェント

転職エージェントとは、民間企業が行っている転職サポートサービスです。就業を希望する人に対して、担当のキャリアアドバイザーがついて、転職活動を伴走してくれます。カウンセリングから求人情報の提供や面接対策、転職後のフォローまでサービス内容が幅広いのが特徴です。

障がい者に特化した転職エージェントも存在するので、てんかんがあり、さまざまな不安を抱えている人は、ぜひ活用を検討してみてください。

改めて、てんかんとは?就労先に伝えるときのポイント

最後に、てんかんについて改めてまとめます。もしかすると、転職・就職活動の際に、言語化が必要なシチュエーションが出てくるかもしれません。就労先に伝える際のポイントもあわせて解説しますので、参考にしてみてください。

てんかんとは

てんかんは、てんかん発作を繰り返す脳の病気です。脳の神経細胞に過剰な電気信号が流れることで、てんかん発作が引き起こされます。日本では約100万人にてんかんがあると考えられています。小児から高齢者まで幅広い年齢で発症する可能性がある、決してめずらしくない病気です。(※17)

てんかんは、原因別に大きく2つに分けられています。出生時の異常や頭部外傷、脳腫瘍などの何らかの病変によるものを「症候性てんかん」、病変が認められず、明確な原因が分からないものを「特発性てんかん」といいます。(※18)

てんかん発作の症状の例

てんかん発作の症状は、てんかんのタイプや人によって異なります。「突然意識を失って倒れる」というイメージが先行していますが、症状は多岐に渡り、一見、発作と分かりにくいものも存在します。

例えば、意識を失うてんかん発作では、全身が硬直してけいれんしたり、突然力が抜けてしまったりします。突然歩き回ったり、口をもぐもぐしたりというのも、よく知られています。

一方、意識がある状態でてんかん発作が起きるケースもあります。手足などの体の一部がけいれんしたり、幻聴・幻覚があったりというのが有名です。また、頭痛や吐き気、不快な臭いを感じることもあります。(※19)

職場には何をどう伝える?

「転職・就職活動において、てんかんのことを申告するべき?」の見出しでもお伝えした通り、てんかんについて職場に伝えるかどうかは本人の自由です。発作が全くない状態が続いている、発作が睡眠中のみに限られているなどの場合は、あえて伝えないというのも一つの選択なのかもしれません。

しかし、万が一発作がおきた際にサポートをお願いしたい場合は、職場に伝えておいたほうがスムーズです。場合によっては、伝えることで、以前より働きやすくなることも考えられます。

伝える際には、自分の症状や発作の頻度、発作が起きた時に対応をお願いしたいこと(あるいは、してほしくないこと)を具体的に、簡潔に伝えてみてください。仕事上に必要な配慮がある場合は、あわせて説明できるとよりスムーズに理解が得られるでしょう。(※20)

まとめ

てんかんがある人は、就労における不安を抱えてしまいがちです。しかし、転職や就職の際にいくつかのポイントを押さえることで、幾分懸念を払拭できるかもしれません。てんかん発作をコントロールしながら、自分らしく働いている人はたくさん存在します。「てんかんがあるから」と自分で可能性を狭めないことが大切です。

また、心身健やかに求職活動を行うために、伴走してくれる支援機関やサービスの活用を検討するのも一つの手。ぜひ本記事の内容も参考にして、悔いのない求職活動を行いましょう。

 

【参照】
※1 てんかん対策|厚生労働省
※2 てんかんとは、どんな病気?|てんかんinfo
※3 てんかん|KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト 
※4 てんかんについてよくある質問|児玉クリニック
※5 精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について
※6 てんかん患者の就労 偏見排し、周囲は理解を|日本経済新聞
※7 日常生活のアドバイス 就職|てんかんinfo
※8 障害年金制度|公益社団法人 日本てんかん協会
※9 てんかんと診断されたら、法律上とれない資格はありますか?|てんかん情報センター
※10 てんかんと自動車運転|公益社団法人 日本てんかん協会
※11 就労移行支援事業|厚生労働省
※12 地域における就労移行支援及び就労定着支援の動向及び就労定着に係る支援の実態把握に関する調査研究|厚生労働省
※13 障害者に関する窓口|厚生労働省
※14  地域障害者職業センター|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
※15 障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
※16 障害者就業・生活支援センターの概要|厚生労働省
※17 てんかんとは|神戸大学医学部附属病院 てんかんセンター
※18 てんかん|こころの情報サイト
※19 もし、突然倒れたら……? 身近な病気「てんかん」|サワイ健康推進課
※20 てんかんと就労について|東和薬品

この記事を監修した人

CBD JAPAN 編集部

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