てんかんに男女差はある?てんかんのある思春期以降の女子が気をつけておきたいポイントは?
また、その後の「青年期」は、さらに自立が加速する時期。「私にも結婚できる?」「子育てできるかな」など、女性のライフイベントを見据えての懸念も出てくるでしょう。
思春期の女子は、これから「思春期」「性成熟期」「更年期」「老年期」と、ライフステージが上がるにつれて、心身や生活環境が大きく変化します。てんかんを抱えている人は、さまざまな変化とどのように向き合っていけばいいのでしょうか。
本記事では、女性のてんかんについてまとめています。主に、てんかんのある思春期以降の女子がこれからの人生において考慮しておきたいポイントをご紹介します。
目次
てんかんとは
てんかんとは、脳の神経細胞に異常な信号が流れることで、てんかん発作が繰り返される脳の疾患です。てんかん発作の症状は、人によって意識の有無や継続時間などがさまざまで、突然意識を失い倒れるものから、他者からは気づかれないようなパターンまでが多様に存在します。
てんかんの原因は、先天性のものから、脳卒中や頭部外傷などの脳の疾患が関係しているものまで多岐に渡ります。
てんかんがある人は、1000人に5〜8人程度だと考えられています。乳幼児から高齢者まで幅広い年代で発症する、決してめずらしくない病気です。(※1)
思春期に発症しやすい「若年ミオクロニーてんかん」とは?
なかでも、思春期に発症しやすいものとして「若年ミオクロニーてんかん」という疾患があります。70〜80%の人が12〜18歳で発症しているのが特徴です。
起床後数時間以内に起こる手のピクつきが主な症状ですが、全身がけいれんする「全般性強直間代発作」を伴うこともあります。多くの場合で、成人期に至るまでの投薬治療が必要とされます。(※2)
てんかんに男女差はある?「月経てんかん」とは?
てんかん発作にはさまざまな症状がありますが、全体としては男性の発症のほうがわずかに多いとされています。しかし、特定の種類のてんかんにおいては、女性の発症が多いことも分かっています。ホルモンなどの影響が関係するという仮説があるものの、詳しいことは分かっていないのが現状です。(※3)
発症に関して目立って大きな差があるわけではないものの、てんかん発作における女性特有の症状が存在します。それは、「月経てんかん」です。
月経てんかんとは、月経(生理)周期に合わせて発作の回数が変化するというもの。月経期間に発作が増加するケースが多く、月経がてんかん発作の誘発因子になる可能性が指摘されています。月経てんかんは閉経するとなくなることからも、ホルモンバランスの変化に由来すると考えられています。(※4)
また、思春期の女子に関しては、初潮をきっかけとしててんかんを発症したり、月経のタイミングでてんかん発作が起きたりというケースも存在しています。(※5)
女性には「思春期」「性成熟期」「更年期」「老年期」のライフステージがあり、どの女性も少なからず、年代とともに変化を繰り返す女性ホルモンの影響を受けています。女性ホルモンの分泌量が変化することにより、ライフステージごとに体調も変化するものです。(※6)
ライフステージとてんかんを直接的に結びつけることは難しいですが、女性は特に、生涯を通して心身の状態や生活、自身を取り巻く環境が大きく変化していくことは確かです。
【女性のてんかん】てんかんのある思春期の女子や青年期の女性が抱えがちな不安
進学や就職、結婚や妊娠など、人生にはたくさんのライフイベントが待ち受けています。これまでとは異なる未知の世界に飛び込むにあたって、誰もが一度は漠然とした心配を抱えると思います。なかでも、てんかんがある人は「てんかんがライフイベントにどう影響するのか」「さまざまな変化によって、症状が悪化しないか」など、多くの不安を感じてしまうのではないでしょうか。
以下では、てんかんのある女子や女性が、成長や人生の大きな節目にあたって不安に感じやすいポイントをまとめています。
いつまで薬を飲まないといけないの?
長く付き合っていかなければいけない疾患と診断され、先の見えない治療に不安になる人は多いものです。特に、思春期はてんかんという病気に対する不安が大きくなりがち。自身の症状を受け入れるまでには時間を要するかもしれません。
てんかんのことを受容できるようになるまでに、さまざまな葛藤もあるでしょう。主治医や家族とのコミュニケーションを通して、状態を把握し、ありのままの自分を受け入れることが大切です。(※7)
友人や彼の前で発作が起きたらどうしよう?
多感な時期である思春期は、特に、人前での発作に恥ずかしさを感じる傾向にあります。人前での発作がトラウマになり、思うように行動できなくなったり、引きこもりになったりしてしまうことも。
てんかんがあるが故の辛さや苦しさは、本人にしかわからない部分も多いでしょう。生きづらさを感じている場合は、周囲に弱音を吐くことも大切です。(※8)
また、てんかんを抱える人のなかには、抗てんかん薬で発作を抑えたり、発作と付き合いながら、充実した日常生活を送っている人が多く存在します。学校生活や恋愛においても例外ではなく、自分を受け入れて自分らしく向き合っている人もいます。主治医とよく相談しながら、治療を続けていきましょう。
将来、働けるのかな?
「てんかんがあるから」という理由で、進路が狭まると考えている人もいるかもしれません。繰り返しになりますが、てんかん発作をコントロールしながら、てんかんのない人と同じように過ごしている人は存在します。
仕事に関しても、一部制限のある職業はありますが、発作の不安を払拭しながら、自分らしく働いている人が多いのが事実です。以下の記事では、てんかんがある人が仕事を探す際のポイントや、向いている職業などをご紹介しています。
https://cbd-japan.com/contents/post-9741/
https://cbd-japan.com/contents/post-9861/
てんかんがあっても結婚できる?
てんかんがあるからといって、結婚できないことはありません。てんかんがある人の内、60〜70%の人は抗てんかん薬を服用することで、発作が止まるとされています。(※9)また、発作のきっかけや原因を把握し対策をする「自己コントロール」によって、発作と付き合っている人も。(※10)
てんかんの情報を広く提供している「てんかんinfo」では、てんかんのある人の結婚や育児にまつわるエピソードも紹介されています。気になる人は、ぜひ目を通してみてください。
てんかんのことを結婚相手や相手の親に伝えるべき?
恋人やパートナーになる人には、てんかんのことや自身の症状について話をし、理解してもらえている状態が理想です。しかし、「てんかんについて告知をしなければいけない」というような義務はありません。
まずは、自身の症状をよく理解し、整理することから始めましょう。納得のいくタイミング、形で伝えられるように準備を進めてみてください。パートナーの家族に伝えると決断された際も、誤解のない形で正確な情報を伝えられるのが理想です。
てんかんは子どもに遺伝する?
親にてんかんがある場合、子どもの発症率は4〜6%というデータが存在し、これは一般の2〜3倍に値します。しかし、てんかんの成因によっても異なり、てんかん全体の数値ではいとも考えられています。(※11)つまり、多くの場合において、てんかんの遺伝性は少ないともいえるのです。
繰り返しになりますが、遺伝に関してはてんかんの成因によって異なります。自身のてんかんの遺伝性に関して不安がある場合は、主治医にしっかり確認するようにしてください。
てんかんが妊娠や出産に与える影響は?
てんかんの治療のためには、抗てんかん薬の服用が必要なことから、胎児への影響が気になるケースも多いでしょう。場合によっては、抗てんかん薬の量や種類の変更が必要なことも考えられます。
また、妊娠による発作の変化や、発作が胎児に与える影響が心配な人もいるのではないでしょうか。あるデータによると、妊娠前と妊娠中の発作回数が変化しなかった人は80%、妊娠中に増えた人は16%、減った人は4%でした。しかし、この変化には妊娠以外のほかの要因もあると考えられており、数字だけで判断するのは難しいものです。(※12)
さらに、妊娠中に大きな発作が起きた場合は、胎児が低酸素状態になることが報告されています。妊娠中の服薬に関しては不安なことが多いと思いますが、自己判断で薬を減らすのではなく、必ず主治医に相談するようにしましょう。
きちんと育児ができるか不安
特に赤ちゃんが小さいうちは、授乳やオムツ替えなどのお世話で生活リズムが不規則になりがちです。「お世話の途中で発作が起きたらどうしよう」「発作の症状が悪化しないか心配」「赤ちゃんに万が一のことがあったら……」などと感じるのは当然のことかもしれません。
てんかん発作の誘発因子として代表的なものに、睡眠不足や疲労などが挙げられます。(※13)産後はどうしても睡眠不足に陥ったり、慣れない変化に疲労やストレスが溜まったりしがちです。詳細については、以下の見出しでも取り上げますが、周囲との協力体制の構築が不可欠だといえます。
てんかんのある女性が妊娠・出産・育児において考慮しておきたいポイント
ここからは、てんかんのある女性が妊娠・出産・育児をするうえで、気にしておきたいことをご紹介します。
思春期の女子にとっては、先のことに思えるかもしれませんが、知識を持ち、心構えしておくことは大切です。クリニックによっては、高校生頃から患者さんに妊娠についてお話しされるところもあるようです。(※14)
妊娠・出産編
まずは、妊娠や出産が現実的かどうかを考えていきましょう。本人の体調はもちろん、周囲のサポート体制や理解の有無などを考慮して、パートナーや主治医と一緒に考えることが大切です。
妊娠や出産のリスクは誰もが抱えていますが、てんかんがある場合は、より一層の配慮が必要とされます。妊娠を望む場合は、1年以上前を目安に、時間をかけて準備をしましょう。(※15)
具体的には、抗てんかん薬の見直しが必要なケースがあります。抗てんかん薬の種類によって、胎児の奇形率が上がる可能性が指摘されています。胎児の奇形は妊娠が発覚する以前に決まるとされているため、場合によっては、前もっての薬の調整が必要なのです。(※16)
また、葉酸を摂取することも重要とされています。葉酸は、赤ちゃんの先天性異常のリスクを減らすために、妊娠中の摂取が推奨されている成分です。抗てんかん薬の種類によっては、体内の葉酸を減少させてしまうため、積極的な補充が推奨されています。(※17)
抗てんかん薬を飲んでいる場合は、葉酸が処方されるケースも。市販のサプリメントもあるため、主治医と相談して検討してみてください。
さらに、妊娠中はできるだけ発作が起きないようにすることが大切です。処方された抗てんかん薬をきちんと服用し、通院を欠かさないようにしましょう。
育児編
出産後は睡眠不足が続いたり、疲労が溜まったりしがちです。睡眠不足や疲れ、ストレスはてんかん発作を誘発する因子として知られています。産後のママが健やかに過ごすためにも、パートナーや周囲の協力体制を整えておきましょう。
基本的には、抗てんかん薬を服用していても母乳で育てることが可能とされています。しかし、出産後の体調によっては、授乳をほかの人に任せられるミルクのほうが適する場合も。さまざまな事情を考慮したうえで、授乳方法を検討しましょう。
また、お世話中の発作に備えて、リスクを回避できる行動を取ることが重要です。沐浴は一人で対応しない、オムツは床の上で替える、外出時にはベビーカーを使用するなど、赤ちゃんを危険にさらさないための行動を取るようにしましょう。(※18)
ほか、赤ちゃんの様子をしっかり診てもらえたり、不安なことをきちんと相談できたりする小児科を探すことも大切です。
番外編|てんかんのある人が利用できる子育て支援
育児において不安な場合は、子育て支援サービスを利用するのもひとつの方法です。家事や育児をサポートしてくれる公的なサービスが存在します。サポートが必要な場合は、一人で抱え込まずに、居住自治体の子育て支援課や子ども家庭支援センターに相談してみましょう。
例えば、東京都の家庭支援課には、子育て事業担当窓口が設置されています。子育て支援サービスに関することや在宅サービスなどについて相談することが可能です。(※19)
なかでも、「子供家庭支援センター」は、子どもや家庭の問題に関する総合窓口として、子育て家庭のさまざまな相談に応じています。在宅サービスの提供やケース援助なども行っており、各区市町村にセンターや窓口が設置されています。困ったことが発生した場合は、問い合わせることで、負担が軽減するかもしれません。
まとめ
本記事では、女性のてんかんについて取り上げました。思春期の女子は、これからさまざまなライフイベントによって、自身を取り巻く環境が大きく変わります。また、ライフステージが上がるにつれてホルモンバランスが大きく変化するため、心身の変化にも対応しなくてはなりません。
「てんかんがあるから」とさまざまなことを諦めている女性がいる一方で、前向きに人生を歩んでいる女性がいるのも事実です。不安や懸念などを一つひとつクリアにし、納得のいく形で前に進めるように整えていきましょう。
【参照】
※1 てんかん対策|厚生労働省
※2 若年ミオクロニーてんかん|医療法人社団かけはし
※3 てんかん患者における性差と薬物療法|埼玉医科大学神経精神科・心療内科 渡邊さつき
※4 月経てんかんについて|てんかん情報センター
※5 てんかんと暮らす|epiサポ
※6 女性のライフステージと病気について|ワタシのカラダ相談室
※7・8 思春期から青年期のてんかん患者の心理的支援|千葉県てんかん支援拠点病院研修会
※9 てんかん|こころの情報サイト
※10 自己コントロールとは|てんかん情報センター
※11 てんかんと遺伝|日本神経学会
※12 女性のてんかん|てんかんinfo
※13・16 女性のてんかん|児玉クリニック
※14 てんかん発作の誘因|てんかん勉強室
※15 女性のてんかん 患者さんとご家族の方へ|東和薬品株式会社
※17 第19回 てんかんを持つ女性の妊娠、出産への備え|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
※18 女性とてんかん ~出産・育児~|医療法人社団かけはし
※19 家庭支援課|東京都福祉局
この記事を監修した人
CBD JAPAN 編集部
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