てんかんのある方が仕事を探すには?ポイントや利用できるサービスを紹介
てんかんがあっても、症状と上手く付き合いながら仕事をしている方はたくさんいます。
自分の病状を把握し、症状をコントロールできるようにしておくことで、ほとんどの仕事は問題なく遂行可能です。またコントロールが難しい場合でも、発作によるリスクを周囲が理解できていれば影響は軽減できます。
本記事では、てんかんのある方が仕事を探すポイントや、仕事探しの際に活用できるサービス・機関を紹介します。またてんかんの症状や対処法についても解説しますので、併せて参考にしてください。
目次
てんかんとは
てんかんとは、てんかん発作を繰り返し起こす病気です。
私たちの脳では脳神経細胞の電気活動により電気が流れており、思考や動作を営んでいます。この電気活動が突如として過剰になると、意識を失って反応しなくなる、けいれんするといったてんかん発作として現れます。(※1)
てんかんの発症年齢は乳幼児から高齢者までの全年齢となっており、有症率も約100人に1人と脳神経系疾患の中では高めです。
原因はさまざまで中には不明なケースもありますが、症状については基本的に一過性となります。(※2)
てんかんは適切な治療を受けることでコントロール可能な病気です。ただしコントロールのしやすさはてんかんのタイプにより異なるため、受診によりタイプを明らかにすることが重要になります。(※1)
てんかんが仕事に及ぼす影響
てんかんがあると定期的に病院に通院しなければなりません。また発作が抑えられない場合は仕事に支障をきたしたり、職場の人を驚かせてしまったりといった影響が出ることも考えられます。
しかし発作を上手にコントロールできていれば、法律で制限されている仕事以外は問題なく遂行できる可能性が高いです。
またコントロールが難しい場合でも、発作によるリスクを職場の人たちにしっかりと理解してもらえれば、影響を最小限に抑えることができます。(※3)
実際にてんかんがあっても、症状と上手く付き合いながら仕事をしている方はたくさんいます。
てんかんがあるということにとらわれすぎず、自分のやりたいことや強みなどもしっかりと考慮しながら就職先を検討していくことが大切です。(※4)
自分一人で検討するのが不安な場合は、主治医やしかるべき機関に相談し、支援してもらいましょう。
てんかんの方が仕事を探す際に利用可能な機関は「てんかんの方の仕事探しに活用できるサービス」の章で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
てんかんの症状と対処法
仕事を検討するためには、自分の症状をしっかりと把握しておくことが必要です。症状を把握できれば、対処法も見えてきやすくなります。
自分自身で日常生活を管理して発作をコントロールしたり、万一発作が起こってしまった時にどんな対処をしてほしいか職場の人たちに伝えたりする上で、これはとても大事なことです。
てんかんの発作は「部分発作」と「全般発作」に大きく分けられます。それぞれの症状や対処法は以下の通りです。
部分発作
脳の一部に異常な電気活動が起こり、生じる発作です。部分発作は「単純部分発作」「複雑部分発作」「二次性全般化発作」の3種類に分類されます。
種類 | 意識状態 | 症状の例 | 対処法の例 |
単純部分発作 | 意識あり | 手足や顔が突っ張る
ガクガクけいれんする 片側の手足がしびれる 人の声が聞こえる 光や色が見える 吐き気をもよおす など |
意識を失うことはないので特別な処置は必要ない |
複雑部分発作 | 意識障害
記憶障害 |
動作が停止しボーッとする
口をモグモグする 手をモゾモゾ動かす 体をバタバタする 自転車を漕ぐような動きをする 発作後にもうろうと歩き回る など |
発作中や発作後のもうろう状態で行動を制止しようとすると、激しく抵抗することがある。
歩き回る場合は一定の距離を保ち、移動する方向の危険を排除する。対応は正面ではなく側方か後方から行う。 など |
二次性全般化発作 | 意識なし | 発作の後半は、全般発作の強直間代発作と似ている
※全般発作の強直間代発作の症状を参考にしてください |
※全般発作の強直間代発作の対処法を参考にしてください |
(※2、5、6、7)
全般発作
脳の広範囲に異常な電気活動が起こり、生じる発作です。全般発作は「強直間代発作」「欠伸発作」「ミオクロニー発作」「脱力発作」の4種類に分類されます。
種類 | 意識状態 | 症状の例 | 対処法の例 |
強直間代発作 | 意識なし | 最初に叫び声やうめき声を上げる
意識を失いけいれんする 手足を伸ばした状態で全身が硬直する 歯を食いしばる 呼吸が停止する 発作後は眠ったり、意識がもうろうとしたりする など |
怪我の原因になるものを周りから排除する。
衣服をゆるめる。 窒息の原因になるため、歯を食いしばっても口の中にタオルなどを入れない。 けいれん後は唾液や嘔吐物で喉を詰まらせないように横向きに寝かせる。 など |
欠伸発作 | 意識なし | 動作が停止する
ボーッとする 話が途切れる 反応がなくなる など 持続時間は5〜20秒くらいと短時間 主に小児期に発症する |
基本的にはそのまま意識の回復を待つ |
ミオクロニー発作 | 一般的に意識消失は伴わない | 手足や全身がビクッとけいれんする
寝起きによく起こる |
基本的にはどんな状況で起こりやすいのかを観察するだけで十分 |
脱力発作 | 意識なし | 全身の力が入らなくなり、崩れ落ちるように倒れ込む
など 持続時間は数秒間とごく短時間 |
突然転倒するため、事前に頭部を保護するなど対策をしておく |
(※2、7、8、9、10)
てんかんの治療法
てんかんは定期的に病院に通い、治療を受ける必要があります。職場で発作が起こらないようにするためにも、通院してしっかりとコントロールしていきましょう。
てんかんの治療法としては「薬物療法」「外科治療」「迷走神経刺激療法」「食事療法」などが挙げられます。
特に抗てんかん薬を用いた薬物療法はよく選択される治療法です。抗てんかん薬には、脳神経細胞の電気的興奮を抑えたり、興奮が他の神経細胞に伝わるのを抑えたりする働きがあり、てんかん発作に対する効果が期待できます。
抗てんかん薬の選択は発作型、年齢、性別などを考慮して行われ、発作に対する効果や副作用の有無を見ながら適薬かどうかを見極めていきます。
1種類の薬による単薬療法が望ましいとされますが、1種類で発作をコントロールできない場合は2種類以上の薬による多薬療法の選択も可能です。
(※11)
てんかんの方が仕事を探す時のポイント
てんかんの方が仕事を探す際には、押さえておきたいいくつかのポイントがあります。
スムーズに就職活動を進め、長く続けられる仕事に就くために大切なポイントなので、しっかりと理解、検討した上で就職活動に臨みましょう。
(※4、12 、13、14、15、16、17)
障害者雇用枠の利用を検討する
障害者雇用枠とは、障害のある方が一人一人の特性に合った働き方ができるよう、一般雇用枠とは別に設けられた特別な雇用枠です。
てんかんのある方が障害者手帳を持っている場合、この障害者雇用枠を利用して就職することが可能です。
一般雇用枠で就職する場合、てんかんであることを職場に開示する義務はありません。
一方障害者雇用枠ではあらかじめてんかんであることを開示して就職するため、職場での理解が得やすくなります。また企業に対して病状に合わせた部署への配置を求めるなど、合理的配慮を求めることも可能です。
ただし障害者雇用枠の求人は、一般雇用枠の求人と比べて少ない傾向にあります。また利用のためには障害者手帳を持っていることが必須となり、職場にてんかんであることを開示することも必要になります。
これらの点も踏まえた上で利用するかどうかを検討してみましょう。
制限がある仕事を把握する
法律の関係上、職業によってはてんかんのある方の就職が制限されることがあります。
例えば自動車免許が必要な仕事や飛行機の操縦者、船員、鉄砲や刀剣が必要な仕事、狩猟免許が必要な仕事などです。
ただしこれらの仕事であっても、病状などの条件次第では従事できる可能性がないわけではありません。そのため希望の職業が見つかったら、自分が制限の対象であるかどうかをしっかりと調べることが大切です。
柔軟な働き方ができる職場を探す
てんかん発作を起こさないためには、定期的な通院、継続的な服薬、規則正しい生活リズムや十分な睡眠時間の確保などが大切です。そのため自分のペースで働ける職場を探すことは、発作を抑えて長く働くことにつながります。
定期的な通院のために休暇を取りやすいか、残業や休日出勤が少なく生活リズムを整えやすいかなどはチェックしておくと良いでしょう。
相談窓口がある職場を探す
職場に相談窓口があれば、働く上で安心感を得られるでしょう。近年従業員のストレス対策に取り組む企業は増えており、社内に相談窓口を設置するケースも見られます。
また労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場においては産業医を選任することが義務付けられています。
職場に相談窓口や産業医が設置されていれば、仕事に関する具体的な相談をしやすいはずです。相談窓口や産業医が設置されている職場を探してみましょう。
自己管理を徹底する
てんかんのある方が社会で働くためには、発作をコントロールするための自己管理が必要になります。
定期的な通院や継続的な服薬を徹底することはもちろん、規則正しい生活や十分な睡眠時間の確保も心がけることが大切です。
仕事を始めると、忙しさからこれらを怠りがちになる可能性も考えられます。そうならないように、今から習慣づけをしていきましょう。
病状について説明できるようにしておく
てんかんを職場に開示して仕事をする場合は、万一の発作に備えて職場の人たちに病状を説明しておくことも大切になります。
説明は「①発作の頻度」「②症状」「③発作時の対処法」「④仕事上の配慮」の4点から行うのがおすすめです。
例えば「①服薬によりコントロールできていて、ここ⚪︎年発作は起きていません」「②発作が起きた場合、けいれんや全身の硬直が1分程度続きます」「③発作中は体を抑えたり、口の中にタオルなどの物を入れたりしないでください」「④自動車の運転は避けたいです」といった具合に、簡潔で具体的な説明を心がけてください。
説明が長く抽象的だと相手が理解しにくくなる上、誤解や不安の原因にもなりかねないからです。
間違った対応により自身を危険に晒さないために、また職場の人たちが必要以上に驚いてしまわないように、しっかりと説明できるようにしておきましょう。
てんかんの方の仕事探しに活用できるサービス
てんかんの方が仕事を探す際には、不安や困りごとが出てくることも多いはずです。そんな場合は、以下のような支援サービス・機関の活用を検討してみましょう。
(※18、19、20、21、22、23)
ハローワーク
ハローワークは、厚生労働省が全国544カ所(令和6年4月時点)に設置する公共職業安定所です。
障害について専門的な知識を持つ職員や相談員を配置し、障害のある方に対する就業支援も行っています。
就業相談や職業紹介はもちろん、場合によっては自分に合った求人の提出を事業主に依頼してくれたり、職員が採用面接に同行してくれたりもするため、てんかんのある方が就職活動をする上で強い味方となってくれるでしょう。
就労移行支援事業所
就労移行支援とは、一般就労を目指す障害のある方に対して就業支援を行うことです。
全国3,301カ所(令和2年10月時点)にある就労移行支援事業所により実施され、学校に通うように通所しながら、就業に必要な知識や技術を身につけることができます。利用できる期間は原則2年以内となっています。
就労移行支援の大きな特徴は、職業訓練や就職活動から職場への定着まで、一貫して支援してもらえることです。
就職後の相談などにも応じてもらえるため、仕事をする中で不安が出てくることも多いてんかんの方にとって、一つの拠り所となるはずです。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センター(通称:中ぽつ、就ぽつ)は、障害がある方の身近な地域において就業面や生活面の一体的支援を行う機関です。
厚生労働省から委託された事業所が全国337カ所(令和6年4月1日時点)にあります。
障害者就業・生活支援センターの大きな特徴は、近隣に住む障害のある方を対象としていることです。
日常生活や地域生活に関する助言なども受けられるため、仕事に関することだけでなく、日々の困りごとについても相談したいという方にマッチするでしょう。
h3:地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する機関です。障害のある方が就業するために必要な専門的訓練、すなわち職業リハビリテーションを実施しています。
各都道府県に設置されており、ハローワークや障害者就業・生活支援センターなどとも連携しながら、一人一人に合わせた支援をしてくれます。
地域障害者職業センターは障害者就業・生活支援センターと混同されがちです。
地域障害者職業センターが障害のある方に専門的な就業支援を行うのに対し、障害者就業・生活支援センターは地域の障害がある方に向けて、就業と生活の両面から支援を行うのが特徴です。
障害者特化型転職エージェント
転職エージェントとは、転職したい人と人材を探している企業の間に入り、ベストなマッチングを実現できるよう支援するサービスです。
求職者一人一人にキャリアアドバイザーがつき、転職活動や転職後の支援を行ってくれます。
転職エージェントの中には障害のある方に特化したものもあります。登録しておくと転職活動をスムーズに進める助けとなってくれるかもしれません。
まとめ
てんかんの方が就職する際には、てんかんに対して理解を得られる職場を探せるかどうかが一つの鍵になります。
今回ご紹介した仕事探しのポイントを押さえ、支援してくれるサービスや機関を上手に活用しながら、自分らしい働き方ができる職場を探していきましょう。
参照:
※3.てんかんのある人に就労の機会を!|静岡てんかん・神経医療センター
※4.てんかんと就労について|東和薬品(監修:東北大学病院 てんかん科教授 中里信和先生)
※5.第2章 意識のある発作(単純部分発作あるいは焦点意識保持発作)|静岡てんかん・神経医療センター
※7.発作時の対処法|てんかんネット(監修:新宿神経クリニック院長 渡辺雅子先生)
※8.第4章 意識が短時間とぎれる発作|静岡てんかん・神経医療センター
※13.雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務)|厚生労働省
※14.障害者に係る欠格条項(63制度)一覧|公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 情報センター
※16.第4章 日常生活の過ごし方|静岡てんかん・神経医療センター
※17.産業医を選任していますか?代表者が産業医を兼任していませんか?|厚生労働省
※18.公共職業安定所(ハローワーク)の主な取り組みと実績|厚生労働省
※20.地域における就労移行支援及び就労定着支援の動向及び就労定着に係る支援の実態把握に関する調査研究|厚生労働省
※23.地域障害者職業センター|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
この記事を監修した人
CBD JAPAN 編集部
CBD JAPANは2021年10月に設立された企業で、「心身の本来の力を引き出し、健康で明るい社会を作る」というミッションを掲げています。コラムは全て下記の監修者のもとで、コンテンツ制作ポリシーに従い制作しております。