【記入例あり】てんかんがある方のヘルプマークの書き方は?入手・活用法なども解説
「普段は見えない病気だからこそ、いざという時に症状や対処法を周囲に伝える術がほしい」と考える方は少なくないでしょう。
そんな方に利用を検討してほしいのがヘルプマークです。ヘルプマークは各自治体から配布されているもので、外からは見えない病気があることや、援助や配慮をしてほしいことを伝えやすくしてくれます。
本記事ではてんかんがある方に向けて、ヘルプマークの概要や書き方、入手法、メリット・デメリットなどをお伝えします。
目次
ヘルプマークとは?
義足や人工関節を使用している方、体の内部に障害がある方や難病の方、妊娠初期の方など、外見からは分からなくても周囲の援助や配慮を必要としている方がいらっしゃいます。
こうした方が援助や配慮を受けやすくなるように作られたのがヘルプマークです。(※1)
ヘルプマークはタグ型をしており、カバンやリュックなど目立つところに付けられます。
赤地に白の十字とハートがプリントされた表面は遠目にも目を引くため、口に出さずとも援助や配慮が必要であることを周囲に伝えやすくなります。
また裏面には体の状態、援助や配慮してほしい内容、緊急時の対処法などを自由に書くことができ、万一の事態に備えることも可能です。
ヘルプマークが日本に導入されたのは2012(平成24)年のことです。前年の3月11日に起きた東日本大震災において、障害や疾患のある方が必要とする支援の方法をうまく周囲に伝えられなかったという出来事がありました。
この出来事を受け、自民党の山加朱美都議会議員がヘルプマークを東京都議会に提案し作成が決定、配布開始となりました。(※2)
その後ヘルプマーク配布の流れは全国に広がり、現在では全都道府県で配布されています。(※3)
てんかんがある方はヘルプマークの対象になる?
ヘルプマークの対象は援助や配慮を必要としていて、配布を希望する全ての人です。病名などは指定されておらず、自己申請により受け取ることができます。
もちろん外見からは分からない困りごとを抱えた方が、周囲に援助や配慮を求めるためのものなので、てんかんがある方もヘルプマークの対象になります。(※4)
てんかんのある方がヘルプマークをもらうには?
ヘルプマークは、各自治体の定められた窓口で配布されています。
窓口は自治体の障害福祉課、保健所、障害者相談センター、公共交通機関の各駅、市立病院などさまざまな場所に設置されています。(※3)まずは自治体のホームページなどで配布場所を探してみましょう。
窓口での申請は、ヘルプマークの利用者本人または利用者の代理人が行えます。
また配布場所に出向くのが難しい方向けに、郵送対応を行っている自治体も一部あります。必要に応じて自治体ホームページなどで調べてみてください。
てんかんがある方のヘルプマークの書き方は?
ヘルプマークには記入用シールが付属されており、援助や配慮してほしい内容、緊急時の対処法などを自由に書いて裏面に貼ることができます。
記入用シールには具体的かつ簡潔な内容を、大きく丁寧な文字で書きましょう。
内容については、てんかんがある方の場合であれば病名、発作の症状、発作が起きた時の対処法などを書くのがおすすめです。以下に一例を載せておきますので、参考にしてみてください。
【てんかんがある方のヘルプマークの記入例】
「てんかん」です。けいれん発作を起こすことがあります。
安全な場所であれば、けいれんがおさまるまでそのまま様子を見守ってください。けいれんがおさまったら体を横向きにして意識回復を待ってください。
けいれんが5分以上続く場合は救急車を呼んでください。 (※5)
てんかんがある方のヘルプマークの活用法は?
てんかんがある方にとって、ヘルプマークが役立つのは主に発作が起きた時です。
てんかんの症状は基本的に一過性で(※6)、発作が起きていない時に周囲の人がてんかんに気づくことはありません。
またてんかんについてよく知らなかったり、間違った知識を持っていたりする人が多いという現状もあります。
そのため発作が起きたときに、周囲の人が必要以上に驚いてしまう、間違った対応をとってしまうといった可能性は十分に考えられます。
ヘルプマークを活用して周囲に正しく症状や対処法を伝えることは、自分のためにも、周囲の人のためにも意義のあることと言えるのです。
てんかんのある方がヘルプマークを持つメリットは?
てんかんのある方がヘルプマークを持つと、周囲の理解や援助を得やすくなったり、本人の安心感につながったりするというメリットがあります。
周囲の理解や援助を得やすくなる
てんかんのある方がヘルプマークを持つ一番のメリットは、周囲の理解や援助を得やすくなることです。
てんかんがある方にとって、発作が起きた時に周囲に適切な対応をとってもらえるかどうかは重要な問題です。
例えば周囲の人がてんかんについてよく理解しておらず、必要がないにも関わらず救急車を呼んでしまったという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このような事態はヘルプマークに「けいれん発作が起きたらそのまま見守ってください。5分以上続く場合は救急車を呼んでください」(※7)と書いておけば避けられます。
発作が起きた時に言葉で対処法を伝えるのが難しいてんかんの方にとって、これは大きなメリットと言えるでしょう。
安心感につながる
てんかんがある方にとって、発作が起きた時に周囲に病状や対処法を知らせる術があるということは、大きな安心材料になるはずです。
てんかんがある方の中には、発作がいつ起きるか分からない不安からさまざまなことに消極的になってしまう方もいらっしゃいます。
場合によっては、不安感からうつ病などの精神的な問題が引き起こされることもあるため、(※8)ヘルプマークにより安心感を得られるのは大きなメリットと言えるのです。
てんかんのある方がヘルプマークを持つデメリットは?
基本的にはてんかんのある方が、ヘルプマークを持つことにデメリットはありません。
しかし人によっては、周囲の人にてんかんであることを知られてしまうことに抵抗を感じることもあるでしょう。
またヘルプマーク自体の認知度がまだまだ低いことから、十分に援助や配慮をしてもらえない可能性もあります。
周囲にてんかんを知られる
ヘルプマークをつけることで、周囲の人にてんかんがあることを知られるのは抵抗があるという方もいらっしゃるはずです。
その場合は、ヘルプマークと一緒に「ヘルプカード」も活用してみてはいかがでしょうか。
ヘルプカードとは、カードタイプのヘルプマークだと考えてください。
ヘルプマークのようにバッグなど目立つところに取り付けられる形状ではありませんが、バッグや財布の中などに入れておくことで病状や発作が起きた時の対処法、かかりつけ医療機関など、より詳細な情報を周囲に伝えることができます。
例えばヘルプマークの裏面に「急な発作が起きることがあります。バッグの外ポケットに、対処法を書いたヘルプカードが入っているので見てください」と書いておけば、普段は周囲にてんかんがあることを知られず、いざという時には援助をしてもらえるはずです。
周囲にてんかんを知られたくない方は試してみると良いでしょう。(※9)
なおヘルプカードの詳細については「ヘルプマークと違う?ヘルプカードとは?」の章で詳しく解説していますので、そちらを参考にしてみてください。
認知度が低い
ヘルプマークの認知度はまだまだ低いのが現状です。
2021(令和3)年に東京都が行った認知度調査によると、ヘルプマークについて「意味も含めて知っていた」と答えた人は全体の64.9%でした。
一方「見たことや聞いたことはあるが、詳しい意味は知らない」と答えた人は23.0%、「知らない」と答えた人は12.1%と、約35%の人がよく知らないことが分かりました。(※10)
また同年の石川県における調査では、「見たことはあるが、詳しい意味は知らない」あるいは「見たことはなく、意味も知らない」と答えた人が全体の約46%と、半数近くを占める結果も得られています。(※11)
このような周囲の認知不足により、ヘルプマークを持っていても十分に活用できない懸念があるのも事実です。
ヘルプマークをより有効活用できるよう、認知を広めていくことは今後の大きな課題となっています。
なおヘルプマークの他にも、残念ながら認知度の低いマークはいくつかあります。
マークを持っている方は、本記事をご覧の皆さんと同じように何らかの困りごとにより援助や配慮を必要としている方です。
以下の表に主なマークの名称と概要をまとめておきましたので、知らないものについては理解し、身に付けた方を見かけた時などに援助や配慮ができるようにしておきましょう。
名称 | 概要 |
耳マーク | 聞こえが不自由なことを表すマークです。筆談で対応する、口元を見せながらゆっくり話すなど、コミュニケーション方法に配慮をお願いします。 |
オストメイト | がんなどで人工肛門、人工膀胱を増設していることを表すマークです。オストメイト対応のトイレに貼ってあることも多いので、使用の際には理解をお願いします。 |
ハート・プラスマーク | 心臓、呼吸機能、腎臓など身体内部に障害がある人を表すマークです。公共交通機関での優先席利用や、障害者用駐車スペースへの駐車などに理解と配慮をお願いします。 |
(※12)
ヘルプマークと違う?ヘルプカードとは?
ヘルプマークに似たものとして「ヘルプカード」というものがあります。
趣旨はヘルプマークと同じで、障害などのある方が困った時に、周囲の人に援助や配慮をお願いしやすくするというものです。
ヘルプカードがヘルプマークと違うのは、形状と記入欄です。ヘルプマークはタグ型をしており、バッグなどの目立つところに付けられるように作られています。
一方ヘルプカードは小さなカード型をしており、普段はバッグや財布の中などに入れておき、いざという時に取り出して提示できるように作られています。
また記入欄についても、ヘルプマークが自由記入欄であるのに対し、ヘルプカードは自由記入欄の他に病気名、病気の特徴、飲んでいる薬、かかりつけ医療機関、連絡先などの記入欄も設けられているのが一般的です。
普段は人目につかない場所にしまっておくため、ヘルプカードの方がプライバシーに踏み込んだ、より詳細な内容を書けるようになっています。(各欄に記入する、しないは、利用者が自由に選べます)
「てんかんのある方がヘルプマークを持つデメリットは?」の章でも解説した通り、てんかんがある方の中には、人目につきやすいヘルプマークに病名や症状を書くことに抵抗がある方も少なくないはずです。
その場合、ヘルプマークにはヘルプカードを見るようにお願いする文言を書き、ヘルプカードに詳細な病状や発作が起きた時の対処法などを書くことで、プライバシーを守りながら援助を求めることができます。
ヘルプカードのもらい方はヘルプマークと同じです。ヘルプマークと併せて利用を検討してみましょう。
(※9)
ヘルプマークに関するQ&A
ヘルプマークに関して、多くの方が疑問に思うであろう内容にお答えします。
ヘルプマークを持っていても運転はできる?
ヘルプマークを持っているからといって、運転が制限されることはありません。運転以外の行動においても、ヘルプマークが制限となることはありません。
ただしてんかんのある方が運転免許を取得する際には、一定の条件があります。当然ですが、条件を満たさず免許を取得できていない場合は運転できません。(※13)
ヘルプマークは無料でもらえる?
ヘルプマークは無料で配布しています。ただしもらえる枚数は1人1枚が基本です。(※14)
ヘルプマークを紛失や破損した場合はどうればいい?
ヘルプマークは再交付できます。交付窓口で再交付申請をしてください。(※14)
まとめ
ヘルプマークは外見からは分かりにくい困りごとに対して、援助や配慮を求めやすくしてくれるマークです。
発作が起きた時に意思疎通がとりにくいてんかんの方にとっても、自分の身を守るために活用できるものです。
ヘルプマークの配布対象は希望する全ての人となっています。あまり堅苦しく考えず、交付申請をしてみましょう。
また必要に応じて、よりプライバシーに踏み込んだ内容を書きやすいヘルプカードとの併用も検討してみてください。
参照:
※3.全国の普及状況(ヘルプマーク)|助け合いのしるし ヘルプマーク
※5.ヘルプマークとは?もらい方や入手法、配布場所、活用事例を解説|LITALICO仕事ナビ
※11.令和3年度第6回「ヘルプマーク、HELPカード認知度について」|石川県
この記事を監修した人
CBD JAPAN 編集部
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