てんかんのある人はキレやすい?てんかんに伴う精神症状について紹介
本記事では、てんかんとキレやすさの関係性について解説していきます。てんかんに伴うさまざまな精神症状や、てんかんのある人が突然怒りっぽくなった時の対処法もご紹介します。てんかんと怒りの関係が気になる人は、ぜひ最後まで目を通してみてください。
目次
「てんかんの人=キレやすい」?てんかんの人の性格的特徴
てんかんは、脳の神経細胞に異常な電気信号が流れることで起きる「てんかん発作」を繰り返し起こす脳の疾患です。発作にはさまざまなタイプが存在し、脳に少なからず影響を与えています。(※1)
てんかんの人の性格的傾向として、よく挙げられるのは以下です。
・まわりくどい
・こだわりが強い
・執着する
しかしこれらは、てんかんのある人本来の性格というわけではありません。てんかん発作が長期的に脳に影響し、性格の変化として現れているものと考えられています。(※2)
てんかんのある人の代表的な性格的特徴に「キレやすい」が挙げられているわけではありませんが、てんかんに伴うさまざまな精神症状が存在することは事実です。詳細は以降の見出しで触れていきます。
てんかんのある人が全員キレやすいわけではない
大前提として、てんかんのある人が全員キレやすいというわけではありません。「怒り」や「イライラ」は、誰しも持っている感情であり、多かれ少なかれ日常生活において表出します。
持って生まれた気質や精神状態、置かれている環境によって、怒りの感情の表出頻度は変わってくるでしょう。怒りの感情には、さまざまな要因が密接に関わっています。
てんかんでキレやすくなる要因
「てんかんがある人はキレやすい」「治療を続けているものの、最近急にイライラするようになった」などと感じる人が一定数いるのには、さまざまな要因が関わっています。
実際に、てんかんによって精神症状が併発することで日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。てんかんに伴う精神症状の出現は、諸説ありつつも20〜30%程度だと考えられています。(※3)
以下では、てんかんの人がキレやすくなる可能性のある要因を3つ紹介します。
てんかん発作に伴う精神症状
まず1つ目は、てんかん発作に伴う精神症状です。さまざまなタイプがあり、発作が精神症状として現れる「発作時精神症状」、てんかん発作が時間をかけて脳に影響を与える「発作間欠期精神症状」、発作の直前や直後に表出する「発作周辺期精神症状」が挙げられます。(※4)
意識がもうろうとしたり、幻覚が見えたりといったものから、不機嫌、暴力的行動など、症状は人によって多岐にわたります。
精神的不安
2つ目は、精神的不安です。てんかんは長期的に向き合う必要がある病気であり、治療にも長い期間を要します。てんかんのある人は、てんかんと診断されたことによる不安や、いつ発作が起こるのかという不安、幸せな人生を送れるのかという不安など、漠然とした不安をいくつも抱えています。
自身が置かれている状況を前向きに捉えられる人がいる一方で、病気を認められなかったり、薬を飲むのをやめてしまい悪循環に陥ったりという状況に陥る人も存在します。なかには、周囲にあたってしまう人もいるでしょう。
状況が深刻な場合は、「不安発作」や「抑うつ状態」などにつながってしまいます。てんかんと向き合うためには、てんかんがある本人が自分を受け入れることが必要なのはもちろんですが、周囲の理解やサポートも欠かせません。(※5)
抗てんかん薬の副作用
3つ目は、抗てんかん薬の副作用によるものです。てんかんの治療においては、抗てんかん薬の服用が重要です。しかし、抗てんかん薬による副作用に悩んでいる人も存在します。副作用のひとつに精神症状が挙げられており、服薬によってイライラしてしまうケースがあるのです。
てんかん患者や医師を対象に行われた治療に関するアンケートにおいて、「日常生活に影響を与える副作用が少ない」ことに関して「非常に満足」「やや満足」と回答した患者の割合は、合計で56.8%でした。反対に、「あまり満足していない」「まったく満足していない」のは、35.6%。副作用が気になっている人が一定数いることが分かります。
さらに、副作用の具体例として挙げられているものとして多かったのは、「眠気」「疲れやすさ」「ものおぼえの悪さ」でした。「過去1年間の気分の状況」の項目では、患者の約3割が「怒りっぽかった」「イライラしていた」と感じていることが分かりました。(※6)
認知症と間違われやすいてんかんの「キレやすい」症状
近年、認知症疑いで病院を受診する人が、実はてんかんであるケースが増えてきています。高齢者のてんかんが増えている一方で、てんかんの症状は多岐にわたるため認知症やほかの疾患との区別が難しく、診断に至らないケースもあると考えられています。
認知症と間違われがちな症状には、怒りっぽさも挙げられています。急に怒り出したり、違和感のある怒り方を繰り返したりする場合は、てんかん発作に伴う精神症状の可能性が考えられます。また、認知機能の変化や異常行動など、一見すると認知症のような症状も実はてんかんであるケースが多いようです。
同じような症状を繰り返すという違和感を感じた場合は、病院を受診し、症状を医師に伝えましょう。てんかん発作による行動の場合は、薬で改善するケースが増えています。(※7)
てんかんのある人が突然怒りっぽくなったときの対処法
てんかんのある人がキレやすくなったり、イライラしたりするのには、さまざまな要因が絡んでいます。てんかんの発作や治療によるものである可能性も大きいため、周囲は落ち着いて接することが大切です。
まずは主治医へ相談を
発作や副作用がイライラの要因になっている場合は、治療方法を変更することで、精神症状が緩和する可能性があります。まずは主治医に相談するようにしてください。
改善が見られない場合や悩みが深い場合は、てんかんの専門医が在籍しているてんかん診療拠点病院に相談するのも良いでしょう。さまざまな観点から診てもらえる可能性が広がります。
その他の機関にも相談可能
てんかんのような症状が気になる人をはじめ、さまざまな事情を抱えている人は、保健所に相談することも可能です。幅広い相談に乗ってもらえるため、病院受診を戸惑っている人やどう相談したらいいか迷っている人に向いています。担当保健師による面談の後、必要に応じて、医師や精神保健福祉士などの適切な専門職へつないでもらえます。全国に拠点が存在します。
また、各都道府県に設置されている精神保健福祉センターやこころの健康センターでも、てんかんに関する相談が可能です。複数の専門職が在籍しているため、幅広い内容に対応してもらえます。
まとめ
本記事では、てんかんと怒りの感情の関係性について解説しました。すべての人が該当するわけではありませんが、「てんかんのある人はキレやすい」といわれる理由にはさまざまな要因が関わっています。てんかん発作によるもの、精神的不安によるもの、抗てんかん薬によるものなど、人によってキレやすさの要因は異なります。適切な治療を行うことでイライラや怒りっぽさが軽減する可能性もあるため、症状に悩んでいる人やてんかんの人を支えている周囲の人は、主治医や専門機関に相談するようにしてください。
【参照】
※1 てんかん対策|厚生労働省
※2 てんかんとは、どんな病気?|てんかんinfo
※3 てんかんに伴う精神症状について|大阪大学医学部附属病院 てんかんセンター
※4 てんかんと精神症状|徳島大学病院
※5 成人のてんかんにおける心理的な問題|てんかん情報センター
※6 患者さんの生活の質を高めるために|公益社団法人 日本てんかん協会
※7 それって認知症?「てんかん」かも!?|国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
この記事を監修した人
CBD JAPAN 編集部
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