アメリカでの大麻合法化が製薬業界の脅威に
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2022年11月1日

アメリカでの大麻合法化が製薬業界の脅威に

学術誌「PLOS ONE」に掲載された査読付き研究論文により、「アメリカの各州が大麻を合法化すると製薬業界は経済的ダメージがかかり、一つの州が合法化するだけでも、製薬会社にとって平均98億ドル程度の市場損失が発生する」という予測が可能なことが明らかになった。

1996年~2019年までの製薬会社の各種データを調べ、「州レベルでの医療用・成人用大麻合法化」の前後における市場傾向を分析したところ、「合法化から10日の時点で株式リターンが1.5~2%下がっていた」というデータが出た。
この「1.5~2%」という数値は製薬業界に大きな影響が無いように見えるかもしれないが、実際には統計的に無視できないものであり、大麻合法化後の20営業日の間は影響が持続すると予測されている。

また、「合法化1件あたりの『企業の市場価値の変化』は平均6300万ドル。合法化1件あたりの『業界全体の市場価値への影響』は98億ドルである」とも見られている。

さて、カリフォルニア工科大学とニューメキシコ大学の研究者は以下のように述べている。
「大麻の合法化により、従来の医薬品と競合する可能性がある。大麻は特許がないため、合法化により『新たなジェネリック医薬品』であるかのように使われ、他の薬物から大麻への切り替えが進むかもしれない。また、大麻は従来の新薬とは違い、使用対象となる疾患が限定されてない。そのため大麻は、多くの異なる薬物市場に、同時に新規参入することとなる」

「鎮痛剤」や「睡眠薬」のような従来の医薬品の代替として大麻を使用する人がいることを示す報告やデータに基づく研究、観察分析は多い。
一例として、処方薬に関する「メディケイド(アメリカの公的な医療扶助制度)」のデータを分析した論文では、「成人用大麻を合法化すると、他の処方薬の使用量が大きく下がる」と示されている。

今回の研究データには注意点もある。
まず、「アクティブな投資家」を研究におけるモデルとしているため、「これから出てくる現実の数値」よりも極端な数値になっている可能性がある。
また、「上場企業のデータ」と「過去の合法化イベントのデータ」に限定して研究されたため、数値にぶれがあるかもしれない。
さらに、「合法化イベントの150日前~50日前の、どのタイミングのデータを基にするか」によって推定値に影響が出ている恐れもある。

いずれにせよ、製薬業界全体の傾向として、大麻合法化に対応するべく、企業努力や資金を投じる傾向にあるため、大麻合法化は現状では製薬業界にとって大きな痛手になっている(またはなり得る)と言える。だが、「大麻がアメリカの医薬品市場の競争を高めるための起爆剤になる可能性もある」という別の見方もできる。

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