脳出血やてんかんなどによる共同偏視とは?仕組み・種類・治療法
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2024年8月16日

脳出血やてんかんなどによる共同偏視とは?仕組み・種類・治療法

共同偏視は左を見る、寄り目になるなど、両目が同じ方向または対称性を持って偏ってしまう症状です。

脳出血や脳梗塞、てんかんなどによる脳の病変が原因で引き起こされます。

本記事では共同偏視について、仕組み、種類、治療法を解説します。

仕組みや種類についてはやや複雑な内容になりますが、箇条書きや表を用いて出来るだけ分かりやすく解説していますので、本文と併せてご覧ください。

共同偏視とは


共同偏視とは、両目が同じ方向または対称性を持って偏る状態のことを言います(※1)。両目共に左側を見る、右側を見る、内下方を見るなどです。

原因

共同偏視は脳の病変により引き起こされます。

脳の病変とは、脳の中の血管が破れて出血する脳出血、脳の血管が詰まったり狭まったりする脳梗塞、髄膜や髄膜液に病原体が入り込んで炎症を起こす脳炎などのことです。

また脳が過剰な電気活動を起こすことにより生じるてんかん発作の際に、共同偏視が見られることもあります。

(※1、2、3、4、5)

仕組み

眼球運動は大脳皮質からの指令が、大脳内→脳幹→神経→筋肉と伝わることによりコントロールされています。

ところが脳出血や脳梗塞、てんかんなどが生じ、大脳皮質から脳幹核に至るまでの経路のどこかで指令の伝達障害が起きると、眼球運動がコントロールできなくなってしまいます。

結果として共同偏視という状態を引き起こしてしまうわけです。

(※6)

共同偏視の種類


共同偏視の原因の一つとして、脳出血が挙げられます。

脳出血が起きる部位はさまざまですが、中でも「被殻出血」「小脳出血」「視床出血」は、以下のように特徴的な共同偏視を引き起こすことで知られています。

脳出血の部位 共同偏視の種類
被殻出血 病巣側への共同偏視
小脳出血 病巣反対側への共同偏視
視床出血 内下方への共同偏視

(※7)

被殻出血による病巣側への共同偏視

大脳の被殻という部位に出血が起きると、病巣側への共同偏視が出現します。左被殻出血なら左側への共同偏視が、右被殻出血なら右側への共同偏視が出現するといった具合です。

例えば通常、右大脳皮質から指令が出た場合、その指令は左右でクロスして左脳幹を経由し、左目の外転神経と右目の動眼神経を刺激します。

これにより左の眼球は外転、右の眼球は内転し、結果として両目共に左側を見ることになります。

【通常の伝達】

  1. 右大脳皮質から指令が出る
  2. 指令が左脳幹に伝わる
  3. 左目が外転(外側すなわち左側を見る)、右目が内転(内側すなわち左側を見る)
  4. 両目共に左側を見る

ここで右被殻出血が起きた場合を考えてみましょう。右被殻出血が起きると上記の伝達経路は途絶して、右大脳皮質からの指令が左脳幹に届かなくなります。

一方で左大脳皮質からの指令は問題なく右脳幹に届き、右の眼球は外転、左の眼球は内転します。つまり出血が起きたのと同じ右側への共同偏視が起きるというわけです。

【右被殻出血がある時の伝達】

  1. 右大脳皮質から指令が出る
  2. 右被殻の出血により左脳幹へ指令が届かない
  3. 左大脳皮質から指令が出る
  4. 指令が右脳幹に伝わる
  5. 左目が内転(内側すなわち右側を見る)、右目が外転(外側すなわち右側を見る)する
  6. 両目共に右側を見る(病巣側への共同偏視)

(※6、7)

小脳出血による病巣反対側への共同偏視

小脳に出血が起きると、病巣と反対側への共同偏視が出現します。左小脳出血なら右側への共同偏視が、右小脳出血なら左側への共同偏視が出現するといった具合です。

例えば通常、右大脳皮質からの指令はクロスして左脳幹を経由し、左の眼球を外転、右の眼球を内転させます。

【通常の伝達】

  1. 右大脳皮質から指令が出る
  2. 指令が左脳幹に伝わる
  3. 左目が外転(外側すなわち左側を見る)、右目が内転(内側すなわち左側を見る)
  4. 両目共に左側を見る

ここで左小脳出血が起きて、左脳幹が圧迫された場合を考えてみましょう。この状態では右大脳皮質から発せられた指令は左脳幹を経由できず、伝達は途絶されてしまいます。

一方で左大脳皮質からの指令は問題なく右脳幹を経由し、右の眼球が外転、左の眼球が内転します。両目共に右側すなわち出血が起きたのと反対側への共同偏視が起きるわけです。

【左小脳出血がある時の伝達】

  1. 右大脳皮質から指令が出る
  2. 左小脳出血により左脳幹が圧迫されて指令が届かない
  3. 左大脳皮質から指令が出る
  4. 指令が右脳幹に伝わる
  5. 左目が内転(内側すなわち右側を見る)、右目が外転(外側すなわち右側を見る)
  6. 両目共に右側を見る(病巣と反対側への共同偏視)

(※6、7)

視床出血による内下方への共同偏視

大脳の視床のうち左右どちらかに出血が起きると、内下方への共同偏視が出現します。寄り目のような状態になると考えてください。

ここで右視床に出血が起きた場合について考えてみましょう。

右視床に出血が起きると、右内側縦束吻側間質核(みぎないそくじゅうそくふんそくかんしつかく)という部位が圧迫されます。

右内側縦束吻側間質核は左眼球の上方運動をコントロールするため、圧迫により左目は上方を見れなくなってしまいます。

右視床の出血により影響を受けるのは右内側縦束吻側間質核だけではありません。実は左右の視床は近接しており、片方の出血は反対側の内側縦束吻側間質核にも影響を与えます。

この場合で言うと、左内側縦束吻側間質核がそれにあたり、右目も上方を見れなくなってしまいます。

結果として両目共に上方へ動かせなくなるため、内下方への共同偏視が引き起こされてしまうわけです。

【視床出血がある時の伝達】

  1. 左右どちらかの視床出血
  2. 左右どちらも内側縦束吻側間質核が圧迫される
  3. 上方を見れなくなる
  4. 両目共に内下方を見る(内下方への共同偏視)

(※6)

共同偏視の治療法


共同偏視は、原因となる病気を治療することで解消できる可能性があります。またてんかんが原因の場合、症状は長時間持続しません。

脳出血の場合 

脳出血による共同偏視は、数週間前後で正常に戻ることが多いです。ただし出血部位によっては偏位が永久的な場合もあり、原因疾患に対する薬物療法や外科療法が必要なこともあります。

(※7、8)

てんかんの場合 

てんかん発作による共同偏視は一時的で、長時間持続しないのが一般的です。

発作に伴って共同偏視も出現するため、てんかんのある方が共同偏視を起きにくくするには、発作そのもののコントロールが重要になります。

コントロール方法には薬物療法、外科治療、ホルモン療法、食事療法などがあり、特に抗てんかん薬の内服による薬物療法は選択されることの多い方法です。

実際に抗てんかん薬は、てんかんがある方のうち約70%の方に効果があると言われています。

(※9、10)

まとめ


共同偏視を認めた場合、脳出血や脳梗塞の可能性も考えられます。これらの病気は重大な後遺症を残す恐れがあるため、早期治療を開始するためにも共同偏視は重要な所見となります。(※6)

いざという時のためにも、共同偏視について正しい知識を身につけておきましょう。

※1.共同偏視|ナース専科

※2.共同偏視|看護roo!

※3.脳卒中|とみた脳神経外科クリニック

※4.脳炎|宇都宮セントラルクリニック

※5.てんかんとは|神戸大学医学部附属病院てんかんセンター

※6.脳の病気によって起こる共同偏視とは|ニューロテックメディカル

※7.脳出血の共同偏視とは?種類や治療や予後について|脳梗塞・脊髄損傷クリニック

※8.共同偏視|大学病院医療情報ネットワークセンター

※9.てんかんの治療法は|岡山大学病院てんかんセンター

※10.てんかんの治療法について|MedicalNote

この記事を監修した人

CBD JAPAN 編集部

CBD JAPANは2021年10月に設立された企業で、「心身の本来の力を引き出し、健康で明るい社会を作る」というミッションを掲げています。コラムは全て下記の監修者のもとで、コンテンツ制作ポリシーに従い制作しております。

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